「パッシブハウスとは?」
「パッシブハウス認定とは?」
「パッシブハウスのメリット・デメリットは?」
近年環境に優しい住宅として注目を集めているパッシブハウスについて、このような疑問をおもちではないでしょうか。

パッシブハウスは「高断熱・高気密」の性質で快適な住空間を実現します。

本記事ではパッシブハウスの概要や特徴、パッシブハウス認定の取得方法、そしてパッシブハウスのメリット・デメリットについて解説します。

パッシブハウスとは?

パッシブハウスとは石油や原子力といった限りある一次エネルギーを使用することなく、自然エネルギーを最大限活用するかたちで快適な家づくりを目指す家の在り方、もしくはそうした考えに則った基準を満たす建築手法で建築された家を指します。

パッシブハウスが生まれた背景には、地球温暖化をはじめとする「人間のエネルギー使用による地球環境破壊」の問題があります。

とくに日本では家づくりにおいて冬の寒さへの耐久性が課題とされ、太陽光からの熱や自然の風を利用した「夏は涼しく、冬は暖かい住環境」を実現するための手法としてパッシブハウスの考え方が用いられています。

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パッシブハウスとZEH住宅の違い

パッシブハウスと同じく環境に配慮した家づくりを実現する目的で登場した建築手法に「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー)住宅」があります。

パッシブハウスでは自然エネルギーの活用を前提にそれ以外のエネルギーを積極的に取り入れない考え方が用いられている一方、ZEH住宅では太陽光発電など人工的なシステムを積極的に利用し、それら技術を用いて削減したエネルギー量と実際に使用する電気エネルギーを相殺するかたちで省エネの実現が図られます。

関連記事:ZEH(ゼッチ)住宅とは?メリット・デメリットを解説

パッシブハウス認定とは?

住宅がパッシブハウスとして公式に認定されるためには、次の3つの基準を満たす必要があります。

  • 冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下
  • 一次エネルギー消費量が120kWh/㎡以下
  • 気密性能として50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下

これらの基準を満たすためには、具体的にどのような住宅構造を施す必要があるのでしょうか。

ここからは、実際にパッシブハウス基準を満たすための具体的な住宅構造について紹介します。

構造①断熱材は30cm以上

外壁の断熱性能には0.15W/m2・k未満という条件が求められ、この基準を断熱材の厚さに換算すると30cm以上に相当します。

断熱材以外にも内壁・外壁の厚さも必要なため1枚の壁あたり40~50cmのスペースを要します。
一般的な日本の住宅では壁の厚さが15cm未満のケースも多く見られ、一般的な厚みの約3倍の壁の厚さが必要だとわかります。

構造②熱交換換気システムを導入

パッシブハウスの建築には熱回収率75%以上の性質をもつ熱交換換気システムが欠かせません。
通常の換気扇では内外の空気が筒抜けとなり使用する度に室温が外へ逃げてしまいます。

この熱交換換気システムを使用することで室内温度を活用し外から取り込む空気を温めたり夏には冷やしたりすることが可能になります。

構造③窓は三重構造

パッシブハウス基準を満たすためには二重窓にさらにアルゴンガスを充てんしたガラスを加え三重構造にする必要があります。

構造④バルコニーを避ける

バルコニーなど断熱材を通さず外部に通じるような部分がある構造では、たとえ面積的にわずかなスペースにすぎない場合でも室内の熱がどんどん外部へ逃げていきます。

こうした内外の空気の行き来を防ぐためにも家の設計の際にはバルコニー設置を避けるという対策が必要です。

構造⑤省エネを意識した給湯方法

パッシブハウス基準の1つである「一次エネルギー消費量が120kWh/㎡以下」を満たすためには給湯のエネルギーを含む全消費エネルギー消費量を最低限に抑える必要があります。

近年ではエネファームや太陽熱温水器の価格も下落傾向にあり、省エネかつ費用対効果の高い機器の導入が以前より手軽になっています。

パッシブハウスの認定を取得する方法

2023年現在、パッシブハウスの認定はパッシブハウス・ジャパンで申請受付・審査を受けることのほかに、パッシブハウス研究所(PHI)などパッシブハウスの許可権者が所属する団体へ申請することで認定手続きを行えます。

日本でパッシブハウスの認定を目指す場合、計画の段階からパッシブハウス専門コンサルに依頼し手続きを進めていく方法がおすすめです。

認定費用の目安

パッシブハウス認定の取得にかかる費用の目安は、パッシブハウス・ジャパンの審査費用とドイツ・パッシブハウス研究所への費用の合計で約30万円が相場です。

そのほかコンサルティング会社に依頼して手続きを進める場合にはコンサルティング費用や設計費が別途必要です。

パッシブハウスのメリット

ここまでパッシブハウスの概要や特徴、パッシブハウス認定の取得方法などについて解説しました。
それではパッシブハウスを選ぶメリットには、どのようなポイントが挙げられるのでしょうか。

メリットとして3点を解説します。

メリット①光熱費を抑えられる

パッシブハウスの大きな特徴である「高断熱・高気密」の性質は冷暖房効率の向上に役立ち、無駄な光熱費を削減できます。
高い断熱性能と高いエネルギー効率性がはたらくため、自然と冷暖房の使用頻度が下がり光熱費削減を実現できます。

メリット②地球環境に優しい

パッシブハウスは定義にもある通り、一次エネルギーを使用せず環境汚染を防ぐため、環境に優しい建物です。
自然エネルギーを最大限活用することで無駄なエネルギー消費を防げるため、エネルギー資源の保存に貢献できます。

メリット③身体的な負担が少ない

パッシブハウスの構造は室内の温度ムラを最小限に抑えられる効果があるため、健康面から考えても快適な空間を実現できます。
住宅内の温度差が生じにくくなることで急激な気温変化を防ぎ、身体への負担が減ります。
高齢者や高血圧など持病がある方にも過ごしやすく健康によい環境づくりを行えます。

パッシブハウスのデメリット

ここまでパッシブハウスのメリットについて解説しました。
一方、パッシブハウスにはどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。

ここからはデメリットとして3点を解説します。

デメリット①自然のエネルギーを活かしきれないことがある

パッシブハウスの構造に問題が生じたり「高断熱・高気密」の環境がつくれなかったりする場合、太陽光や自然風の能力を効果的に活かせず快適な住環境を実現できないリスクがあります。
自然エネルギーを活用できない事態になってしまってはパッシブハウスを選ぶ意味がありません。

こうした設計ミスやトラブルを防止するためにも、設計段階において各構造の機能について綿密な確認が必要です。

デメリット②建築やリフォームにコストがかかる

パッシブハウスの建築では高い断熱性能や日射取得のために高機能な構造を組み込む必要があるため、一般的な住居建築と比較して建築費が高額になります。

しかしここで考慮すべきはパッシブハウスがもたらす光熱費の削減という経済的効果です。
住宅ローンとして毎月支払う金額と光熱費をあわせて、最終的に支出が必要な額を一般的な住宅の場合と比較することで、納得感が得られるかたちでパッシブハウス建築を検討できます。

関連記事:パッシブデザインの建築手法について事例から理解を深めよう

デメリット③対応できる業者が限られている

パッシブハウスのデザインや設計には高レベルな技術が求められるため、パッシブハウス設計に対応可能な業者は少数に限られます。
例えば日射に関する設計過程では、太陽光が差し込む時間帯や角度、日射で生まれる熱の量などを計算してバランスを考える必要があります。
そのため建築を依頼する業者を選ぶ際には、パッシブハウス建築に関する確かな技術をもったハウスメーカーを選ぶことが重要です。

パッシブハウスを建てる前に意識しておくこと

ここまでパッシブハウスのメリット・デメリットについて解説しました。
それでは実際にパッシブハウスを建てる前にどのような点を意識する必要があるのでしょうか。

ここからはパッシブハウスを建てる前に意識しておくべき4つの注意点について解説します。

注意点①日射取得を調整する

パッシブハウスでは季節にあわせて日射を活用することが非常に重要です。
例えば冬の日中に最大限の日光を取り込めるように、家の南側をすべて窓にする住宅設計方法もあります。

参考記事:なぜ戸建ての二階は暑いのか?原因と対策方法をご紹介!

注意点②断熱のレベルを設定する

断熱レベルを考えるうえで重要な単位が「UA値」です。
UA値とは家の断熱性能を数値化する指標の1つで、UA値が低いほど断熱性は高くなります。

パッシブハウス基準ではHEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)の定めるG2~G3レベルが推奨され、UA値に換算するとUA値を0.26程度に抑える必要があります。

注意点③空気の流れをつくる

パッシブハウスの快適さに直結するのが空調設計です。
空調機器は1~2台と最低限に抑え、地域の気候に適した空調設計を施すことで自然エネルギーを活用した快適な空間づくりを行います。

注意点④複数の業者を比較検討する

パッシブハウスで快適な住空間を実現するためには高い技術と知識をもつ専門業者へ設計を依頼することが重要です。
業者を選ぶ際には必ず複数の業者に対し見積もりを依頼し、比較・検討を行いましょう。

パッシブハウスの建築は専門性が高いため複数の業者へ問い合わせ、そのなかから技術が優れている業者を選ぶことが大切です。

パッシブハウスで自然に優しい快適な住空間を手に入れよう

日本では未だ事例が少ないパッシブハウスの建築ですが、パッシブハウスという家のあり方は今後持続可能な社会を実現するための重要な考え方です。

これから新たにオーダーメイド住宅を手に入れたいと考えている方は、地球環境だけでなく健康にも優しいパッシブハウスを検討してみてはいかがでしょうか。

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