ユネスコ世界ジオパークにも認定されている隠岐諸島。
そこには、壮大な地球の物語を体感できる、原初の自然や独自の生態系、大地の成り立ちを示す景観などが残されている。

そんな島根県隠岐、海士町に2021年7月にオープンしたホテル「Entô」。
目の前の自然を純粋に体感できるように計画されたNEST棟の建築は、CLT(直交集成板)パネル構法によるもの。
インテリアにも島根県産のスギなど木材がふんだんに使われており、保護塗料に「オスモカラー」、客室や廊下、展示室などの床には「オスモフローリング」が採用された。

眼前に島前カルデラを望む「Entô」NEST棟3階のネスト スイート。
室内外の壁はCLT現しとスギ材。テラスの床はサイプレス材。
いずれも「オスモカラー」で塗装した。
内装と外装では塗料が異なり、調合も変えているが、風合いはそろえている。
客室の床は「オスモフローリング」オークナチュラル シルキー(節有)。

設計を担当したマウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏さんは「CLTでつくりたいと考えたとき、その仕上げも嘘をつかない世界にしたかった。
内側の素材がそのまま外にもでてくる。
だから海の目の前というハードな環境に耐えながらも、自然や人体にやさしい塗料を選びました」と話す。

環境先進国ドイツで開発されたオスモカラーは、植物オイルと植物ワックスがベースの木材用自然塗料。
内部に浸透して塗膜をつくらないので木本来の調湿性を妨げず、空間全体を心地よく保つ。
防汚性や耐久性、撥水性など保護性能も高い。
さらに原料の植物は生長過程において地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収するなど、環境にもやさしい。

原田さんたちは以前からオスモカラーを採用しており、サンプルを自分たちで調合しながらいくつも実験をして、建物ごとにオリジナルの塗料をつくってもらっているという。
それは、樹種や赤身、白太により木材の色がさまざまなことに加え、建物ごとに環境や光の質が異なるため、それぞれにふさわしい表情があるからだ。
「Entô」の壁も、すでに何年か経過したようなしっとりとした風合いで、思わず触りたくなる。

上右/2階のジオ・ホールと1階ジオ・ラウンジをつなぐ階段。「オスモカラー」を塗装した格子状のCLTは耐力壁。
上左・下/ソファに腰掛けて大自然に向き合いながら、数十億年前とつながる時間を過ごすことができるジオ・ラウンジ。
ストロマトライトなど、世界各地の化石が展示される台と床には「オスモフローリング」オークナチュラル シルキー(節有)が使われている。

床材にはオスモフローリング・オークナチュラル シルキーが選ばれた。
厚さ21ミリ、幅16センチの無垢のヨーロピアンオーク。木材の会社として誕生し、140年の歴史を持つオスモならではの重厚感ある製品だ。
シルキーのいちばんの特徴は、塗装したとき特有の黄みがかった濡れ色にならないこと。
導管のみ白の顔料が入るので、森の木をイメージさせるような色とテクスチャーになっている。
「ペタペタしない質感もいいですね」とマウントフジアーキテクツスタジオの原田麻魚さん。
客室を素足で歩くときも、ジオ・ラウンジでくつろぐときも、五感を解き放つことができるのは、木の魅力が最大限に生かされているからだろう。
「『木に包まれる空間からはあたたかみを感じる』という声を、お客様からもよくいただいています」と、Entôを運営する株式会社海士代表取締役の青山敦士さん。
環境共生に配慮された素材に触れながら、自然と一体化する体験は、この場所でしかできない贅沢なものだ。

撮影/梶原敏英

雑誌記事転載
『コンフォルト』2022 April No.184
https://confortmag.net/no-184/

ホテルEntô HP:https://ento-oki.jp/

【オスモカラー】
https://osmo-edel.jp/product/osmocolor/

【オスモフローリング】
https://osmo-edel.jp/product/osmoholz/