愛知県西尾市の「スズキ&アソシエイツ株式会社」は、アメリカのバイクメーカー:ハーレーダビッドソンのカスタム用パーツを輸入販売されています。
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【1】「エネルギーシフト(※1)を実現する」
【2】「ボーダレスな社屋とする」

というコンセプトを掲げて建設されたオフィスは、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した「ゼロエネルギービル(ZEB)」で、CLT(※2)を使った木造建築とすることで、CO2放出量の抑制と構造強度を両立されています。
実際に、スズキ&アソシエイツ様のオフィスを訪問し、スズキ&アソシエイツ株式会社代表取締役鈴木様と設計を担当された株式会社まぎし建築設計事務所曲師様・石橋様にお話をうかがいました。

一番右:スズキ&アソシエイツ株式会社代表取締役鈴木様
左奥:株式会社まぎし建築設計事務所曲師様
左手前:まぎし建築設計事務所石橋様

目次

今回新社屋建設の計画にあたり、お考えになられたことを教えてください。
はじめから、高い環境意識をお持ちでZEB認証取得の省エネルギー仕様でご希望されていたとのことですが、背景にあるのはどういったお考えだったのでしょうか?

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
新社屋建設の計画にとりかかったのが2018年の夏でした。
それまでだったら、普通の社屋を建てていたと思いますが、あるきっかけがありました。

中小企業家同友会という経営者の全国団体で、「岩手のエネルギーシフトの視察」という企画があり、参加しました。
その時に、岩手県の平泉にある、平泉ドライビングスクールを見学しました。(※3)
そこで、建物のエネルギーに関するアドバイザーを担当された、長土居正弘さんが建物の解説をしてくださいました。
この時に、私が新社屋で取り組みたいことはこれだなと思いました。

木造で、環境に配慮し、エネルギーシフトを意識した建築

その時に、ヴァレーマの外付けブラインドを、おお!っとみんなでビックリしながら見たことを覚えています。
構造や断熱についてなどこと細かく説明していただいたのをきいて、これを新しい社屋で実現しよう!と思いました。
そして、帰ってきてすぐに曲師さんに話をし、再度、曲師さんも一緒に平泉へ行って、曲師さんとエネルギーアドバイザーの長土居さんとプロ同士で話をしていただきました。

さらに、岩手県中小企業家同友会主催の「エネルギーシフト欧州視察セミナー」にも参加。
ドイツの環境都市:フライブルクやスイスのバーゼルなどを訪問し、再生可能エネルギー利用や省エネルギー、エコ建築、自然資源の持続可能な活用に取り組む事例を視察しました。
また、私自身、前職で、30年以上、ドイツを中心としたヨーロッパの企業との取引があり、ドイツ、オーストリア、スイスなどの街並みや環境に配慮したライフスタイル、考え方に対しての憧れもあって、それも影響したと、今となっては思います。
今思い返してみると、ドイツの小さなホテルであったとしても、そういえば、外付けブラインドがついていたなと思い出しました。

2つ目のコンセプトである、「ボーダレスな社屋」というのは、どういうお考えからでしょうか?

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
これは、私が伝えた希望から、曲師さんが導き出してくれました。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
鈴木社長からのオーダーで「エネルギーシフト」という大きなコンセプトができたわけですが、もう一つの「ボーダレスな社屋」というコンセプトについては、鈴木社長からいただいた「素足の会社」と書かれた写真からたどりつきました。

この「素足の会社」という言葉と写真に、鈴木社長の、会社と会社で働く社員のみなさんへの想いが詰まっていると理解しました。
そして、「ボーダレスな社屋」というもう一つのコンセプトを導き出しました。

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
この写真は、先ほどもお話した、エネルギーアドバイザーの長土居さんが主宰されているDotプロジェクトのHPで見たもので、この写真を見た時に、「素足でも仕事ができるような会社」というのが浮かんできました。
そこには、「素足の会社」という言葉が書いてあったわけではなく、「岩手のような寒い地域でも、素足で過ごすことができる家」という意味が込められていたんですが、写真からインスピレーションを得て、「素足の会社」という言葉が思い浮かびました。

実際に、今、社員が素足で仕事をしているわけではないのですが、素足で仕事ができるくらい、快適で過ごしやすい会社という意味と、社員がオープンマインドして、リラックスして働けるというイメージで「素足の会社」という言葉を掲げました。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
社員のみなさんの気持ちをオープンにして、一体感をもって、仕事をしていきましょう!ということだと理解しました。
ということは、社員のみなさんも建築も、ボーダーをなくしましょう!仕切りをなくしましょう!ということだと。

木造でつくる

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
具体的に、「エネルギーシフト」を実現するために、木造で建てようということにしました。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート(RC)造とありますが、木造を製造する際の炭素放出量は、他の材料に比べて最も少なく、鉄骨の約3分の1、鉄筋コンクリートの約4分の1ともいわれます。
木は、成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するのはもちろん、木材になっても炭素は固定されたまま、という素晴らしい素材です。
取引先のみなさまや社員のみなさんへエネルギーシフトを見える化する、エネルギーシフトの象徴という意味でも、木造にするのが良いと思いました。

ところが、木造の難しい点は、大スパンをとばすことができないという点です。
構造強度をもたせるために、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)を使おうということになりました。
日本CLT協会にも入って、講習も受けて、いろいろと勉強しました。
ただ、CLTだと、どうしても木造らしい繊細さが表現できないという壁にぶち当たりました。
最終的に、36mm厚のCLTを見つけることができて、これであれば、強度も出せるし、地元の大工さんでも扱えるということで、防火の関係で内壁のみですが、このCLTを採用しました。
これにより、だいぶスパンをとばすことができました。
2階なんて、柱がありませんからね。

高気密・高断熱

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
そして、「エネルギーシフト」を実現する上で、もう一つ重要なポイントは、高気密・高断熱です。
エネルギー消費量を減らして快適な空間を実現するには、壁面や天井などの輻射(表面温度)を室温と同じ程度の温度にすることが最も重要です。
そのためには、壁や窓を高断熱化・高気密化する必要があります。
トリプルガラスの樹脂サッシ、外壁は付加断熱をして、二重の断熱、屋根断熱は3層の断熱をして、隙間がないように、施工しました。

自然を生かしたゼロエネルギー:地中熱利用

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
再生可能エネルギーを利用するということで、外気よりも夏は涼しく、冬は暖かい、地中熱を利用することも希望しました。
これもエネルギーシフトを実現する上で必要なことだと思います。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
地下水を利用するという考えもありますが、地下水だと利用できるかどうか掘ってみないとわからないので、地中の比較的浅い10mくらいのところの安定した熱を効率良く利用することになりました。

「木」と「ガラス」と「鉄」という素材をバランス良くデザイン

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
また、建築全体のデザイン的なコンセプトに関しては、材料のコンセプトを「木」と「ガラス」と「鉄」で構成しようということにしました。
木のやわらかさとガラス・鉄のシャープさ。
木ばかり使ったり、木をどーんと面で張ってしまうと、ログハウスや山小屋のような雰囲気になってしまいます。
色は、「木の茶色」「白」と「黒」という構成でデザインを考えていきました。

木の壁については、既成サイズのヒノキの間柱を、この大きさに切ってくださいとお願いして、厚みを45mmにしたり、30mmにしたり、デコボコに張り、飽きさせないデザインになるよう工夫しました。
このようにデザインで工夫することで、重たくなりすぎないように意識しました。
そこに、ブラインドの横ラインがきて、さらに、全体として、デザインが飽きない空間になったと思います。

【石橋様】
木を引き立てるために、鉄の黒やガラスをバランス良く配置することを意識しました。
玄関入ってすぐの吹き抜け部分は、天井が高いので、木の張り方と階段の手すりのタテのラインを意識しました。

ストレスフリーな心地よさ

社屋完成後、実際に、社員のみなさまが日々こちらのオフィスでお仕事をされていて、特に気に入っていらっしゃるポイント(場所や設備など)はどのようなところですか。

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
すべてです。不満な点が特にないです。
どれが特別いいというより、ストレスがない「環境のストレスフリー」というようなことを感じています。
これが普通なのかなと思うくらい、建築全体が、ストレスフリーですね。
どれを採用したからというのでもないと思いますし、デザイン的にも、それぞれが、華美になり過ぎず、一方で、適度に主張している、バランスがいいと感じています。
結果として、地球にも人にも負荷のかからない、ストレスフリーの空間になったので、満足しています。

外付けブラインドヴァレーマについて

外付けブラインドヴァレーマの使い勝手と使ってみての感想はいかがでしょうか。

(スズキ&アソシエイツ様では、太陽追尾自動制御システムを導入されています。
この日は曇り空だったので、ヴァレーマは水平になっていました。)

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
必要に応じて、一部手動で操作しますが、基本的には、自動制御に任せています。
先ほどのストレスフリーの話にも通じますが、何も感じないというか、何も考えなくてよいというか、ブラインドの羽根の角度が常に自動で最適な角度になっているので、何も感じない、何も考えなくていい心地よさというのがあります。
光は適度に入りますし、一方で、不快な熱が入ってくることはないので、快適です。

【社員の方のお話】
その日の太陽の位置や角度に合わせて、ブラインドの羽根が適切な角度に動くので、とても助かっています。優れモノだなと。
これだけ窓が大きいので、本当は、できるだけ窓から光を多く取り入れたいです。
以前のオフィスだと、ブラインドを閉めたら、閉めっぱなしということも多くありましたが、今は、自動でブラインドの羽根がベストな角度に調整されて、光も入るし眩しくないので快適です。

また、仕事の合間にふと窓の外を見た時に、窓の外の緑が見えるのもいいですね。
正直、これが当たり前の景色になっていますが、やはりいいなと思います。

曲師様はいかがでしょうか。もし導入にあたって懸念されたことなどもあれば、それもあわせて教えてください。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
我々建築設計士は、室内のカーテンやブラインドよりも、窓の外側で日射をコントロールするほうが、遮熱効果が高いというのは、基本的なこととして認識しています。
ただし、実際に導入している例が少なく、窓の外側につくといっても固定ルーバーのようなもので、羽根の角度が調整できなかったり、デザインがごつごつした感じのものだったり・・・という理由で、導入しづらいという印象がありました。
ヴァレーマは、薄くてカッコよくデザイン性が良いですね。
正面のカーテンウォール部分も、ヴァレーマがあることによって、カーテンウォールの方立が、スッキリとシャープに見えます。ファサードデザインのポイントになっていると思います。

【まぎし建築設計事務所:石橋様】
導入にあたって懸念したこととしては、デザインがきれいな反面、耐久性はどうなのか、風が吹いて簡単に壊れてしまったりしないのかといったことが心配でした。
事前に、強度やメンテナンスについて、よく説明していただいたので、不安なことはないと判断できました。

また、(風の振れ止めのために両サイドに入っているガイドを)レールガイドにしたほうがより風に対して強いということで、レールガイドを選択したので、より安心感がありました。

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
風の話で言いますと、風力センサーが強風を感知してブラインドが上がるということは、1か月に1度あるかどうかという頻度ですね。
台風もきていますが、台風の時は自動で風力センサーが強風を感知して、ブラインドがあがっているので、特に心配なことは今のところないです。
(自動制御や風力センサーがついているということもありますが、)風が強くてハラハラするとかそういったこともなく、ナチュラルにこの建物に溶け込んで存在しているという印象です。

【まぎし建築設計事務所:石橋様】
その他、導入にあたって懸念したのは、コスト面と納期です。
コスト面は、鈴木社長が実際にヴァレーマをご覧になったことがあり、製品の考え方にも共感されているという点も、採用に至ったポイントだと思います。
輸入品なので納期についても心配でしたが、スケジュール通りに納品していただきました。

オスモフローリングについて

オスモのフローリングについてはどのような感想をお持ちでしょうか?
導入にあたって、懸念されたことやご苦労されたことがあれば教えてください。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
オスモフローリングも採用してよかったです。
広々とした空間を実現したいという考えがある中で、フローリングも幅の狭いものではそぐわない、幅広のものを採用したいと思いました。
質感と幅広のものであるという点で、満足しています。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
事前に懸念したことは、無垢フローリングですから、反りなどのあばれが心配でした。
実際に、過去に、無垢材を採用して、反りやあばれが問題になった経験もありました。
この点については、大工さんともよく打ち合わせをして、施工する時の隙間を調整するなど、施工面で、できるだけリスクを回避するための準備をしました。

(スズキ&アソシエイツ:鈴木様へ)
今のところどうでしょうか?あばれなどは気になっていませんか?

【スズキ&アソシエイツ:鈴木様】
そうですね。特にあばれなどが気になっているということはないですね。

【まぎし建築設計事務所:曲師様】
また、無垢材は、木材自体の含水率もポイントだと思っています。
もちろん施工面で工夫したということももちろんあるのですが、あわせて、オスモフローリングが無垢材の製品として、含水率の問題もしっかりクリアーしていたということも言えると思います。

【社員の方のお話】
木の香りの心地良さを感じます。
正直、だんだんこの環境が当たり前になってきているので、この環境のありがたさを実感することが薄れてきてしまっているのですが、お客様がいらした時にそういった感想をいただくので、改めて、最初にこの空間に入った時のその感覚を思い出します。

最後に・・・

「こういう社屋を建築することが、会社としての付加価値を生み、後々の財産になると思っています。
人材の確保という意味でも価値があると。
働く人が働きやすい環境を整え、この働く環境についてや働き方の発信をしていくことが、会社の発展につながると考えています。」という、鈴木社長のお話が印象的でした。

社屋の中心部に位置するのがこちらの場所です。社員のみなさんが休憩されたり、朝のミーティングにも使用されているという多目的スペース。
植物や窓の外に向けてソファが置かれ、スズキ&アソシエイツ様が目指されている「素足の会社」を象徴するような、ほっと一息ついたり、社員のみなさんが気持ちをオープンにできるような場所だと感じました。

※1 エネルギーシフト:
建築や生活で必要となる電力や燃料などのエネルギー全般を、再生可能エネルギー(太陽光や地熱、風力などの自然のエネルギー)の利用へ転換(シフト)すること

※2 CLT:
Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)の略称。 ひき板(ラミナ)を並べた層を、板の方向が層ごとに直交するように重ねられた木材のことです。 強度が出るので、構造躯体として建物を支えることができ、木造の中低層・高層建築の可能性が広がります。 パネルを工場であらかじめ加工して現場に搬入するので、工期を短縮できるなどのメリットもあります。

※3平泉ドライビングスクールについて:
「居心地のいい、いつまでも居たくなる自動車学校」を目指して建築されました。
再生可能エネルギーを活用して、エネルギーシフトを実践。
断熱性能や気密性能を高め、室温・Co2濃度・照度がすべて計算されており、天井から足元、窓側でも温度差が感じられない、快適な空間です。
外付けブラインドヴァレーマもご採用いただいています。

スズキ&アソシエイツ様HPはこちら
https://www.customworld.jp/

まぎし建築設計事務所様HPはこちら
http://magishi.com/

【オスモフローリング】
https://osmo-edel.jp/product/osmoholz/

【外付けブラインドヴァレーマ】
https://osmo-edel.jp/product/warema/
https://osmo-edel.jp/product/building-warema/

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