近年、さまざまな理由から注目されているのが「パッシブハウス」です。機能性の高い住宅を建てたいと考えた際に、パッシブハウスを知った方もいるのではないでしょうか。
そこで「どのような魅力があって注目されているの?」「特徴を知りたい」といった方のため、パッシブハウスとはどのようなものなのかについて解説します。この記事を読むことによって確認しておきたい基準や事例、メリット・デメリットなどがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
パッシブハウスが注目を集めている理由とは
なぜパッシブハウスが注目されているのかというと、これは省エネ性能の高さや、環境負荷の低さなどが評価されているためです。
高機能な住宅を建てたいと考えた際、省エネ性能にこだわる方が多いのではないでしょうか。省エネ性能が高ければ、少ないエネルギーで快適に過ごせるようになるので、光熱費などを抑えることにもつながります。
パッシブハウスは、断熱性や気密性などが高いことに加え、光や熱、風といった自然エネルギーを有効活用できる建築方法です。
これは、環境負荷を抑えることにもつながります。自然に優しい家づくりをしたいと考えているものの、どうすれば良いのかわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
パッシブハウスは環境先進国であるドイツで確立されたメソッドです。世界的に見て環境負荷を抑えようとする動きが高まっている近年、特に注目が集まっています。
パッシブハウスの特徴
パッシブハウスの大きな特徴として挙げられるのが、断熱・遮熱・蓄熱といった3つの性能の高さです。それぞれどのようなものなのかについて解説します。
特徴①断熱
パッシブハウスは、高い断熱性能を持ちます。断熱とは熱が伝わらないようにする性能のことであり、建物内が外の気温によって暑くなったり、寒くなったりするのを抑える役割を持つものです。
断熱性能が高ければ夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。また、家全体の断熱性能が高ければ、家の中で各部屋によって大きな温度差が生まれるようなことも防げます。
壁や床、基礎などに使われているものの断熱性能を上げたり、断熱材を使った施工を行ったりすることで断熱性能を高めることが可能です。
特徴②遮熱
パッシブハウスは遮熱においても優れています。断熱が建物内に熱を伝えない性能であるのに対し、遮熱は外気熱を反射させたり、入り込まないように防いだりすることによって室温の上昇を抑える方法です。
パッシブデザインでは、庇や軒を作り、それらを長くするなどの工夫で遮熱性を高めています。
参考記事:なぜ戸建ての二階は暑いのか?原因と対策方法をご紹介!
特徴③蓄熱
蓄熱とは、漢字の通り熱を蓄えることをいいます。冬場は暖かい時間に太陽光を蓄え、気温の低下とともに放熱して建物内を暖めることが可能です。
一方、夏場は蓄熱材が日中の気温上昇を引き受け、室温の上昇を抑えます。また、1年を通して室温の変化が緩やかになるのを感じることが可能です。
健康的に生活したいと考えた際、急激な室温の変化が起こらないようにするための温度管理は非常に重要です。例えば、温度差が原因で発生するヒートショックは毎年多くの死亡事故に繋がっています。
東京都健康長寿医療センター研究所による調査では、ヒートショックに関連した入浴中急死の件数は、交通事故による死亡者数の3倍にもなったと報告されているほどです。外出中に事故に遭わないように注意するのはもちろん大切ですが、安全なはずの建物内でこれほど多くの事故が発生しており、その原因が温度の急激な変化にあることはよく理解しておく必要があります。
パッシブハウスなら温度管理もしやすいです。
参考:(PDF)地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター 研究所(東京都老人総合研究所):入浴時の温度管理に注意してヒートショックを防止しましょう[PDF]
パッシブハウスの基準
パッシブハウスを建てたいと考えた際、前述の断熱や遮熱、蓄熱にこだわった住宅であれば、パッシブハウスとして認められるわけではありません。明確な基準が定められており、それを満たす住宅である必要があります。
満たさなければならない条件は、以下の3つです。
◆パッシブハウス基準
- 年間の冷暖房負荷が各15kWh/m2以下であること
- 家電も含む一次エネルギー消費量が120kWh/m2以下であること
- 気密性能として、50Paの加圧時の漏気回数が0.6回以下であること
すべての条件を満たすようにPHPPソフトを使用し、建物の熱損失計算を行う必要があります。基準を満たしていることを明確に示すためには、認定を受けている材料を用いるのはもちろんのこと、一般社団法人パッシブハウス・ジャパン加盟の省エネ建築診断士から設計監理を受けなければなりません。
そのため、これらの条件を満たすのは、非常に難しいことといえます。さらに、日本国内ではパッシブハウスに対応している建築会社が限られている状況です。
ZEH住宅との違い
ZEH住宅との大きな違いは、一次エネルギー消費量に関する考え方と、気密性能に関するポイントの2つです。
そもそもZEHとは何かというと「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の頭文字を取った略語であり、年間でのエネルギー収支をゼロにする家を指しています。電気は日常的に使いますが、ソーラー発電システムなどを活用し、消費した電池と同等、またはそれ以上の電気を生み出すことにより、エネルギー収支をゼロ以下にできます。
「夏場でもエアコンを使わない」といったように無理に消費するエネルギー量を減らすのではなく、断熱性や設備の効率化などによってエネルギー量を抑えるのが特徴です。
ZEH住宅でもパッシブハウスでも、一次エネルギー消費量を用いた計算を行います。ただ、計算する際にZEH住宅では家電によって消費されるエネルギーを含まないのに対し、パッシブハウスでは含むのが違いです。
また、ZEH住宅では気密性能が問われないのに対し、パッシブハウスでは問われます。
ZEH住宅の場合、たとえエネルギーをたくさん消費したような場合でも、それ以上のエネルギーを太陽光発電などで生み出せればZEH住宅とすることが可能です。
一方、パッシブハウスは家電も含む一次エネルギー消費量などが明確に定められており、エネルギーの消費自体を抑えることを重視した考え方といえます。
パッシブハウスの事例
パッシブハウスにすることによってどのような効果が期待できるのでしょうか。事例を紹介します。
事例①雪国でも暖かい家
リノベーションによって空気層で居室を囲い込み、寒さ対策を行った事例です。外壁周りは基礎の作り直しも行いました。雪国は特に冬場の寒さが厳しいですが、家全体に断熱を施すことにより雪国でも暖かい家が目指せます。
参考:タイテル:湯沢の二世帯住宅 〜土間と廻り廊下の空気層〜
事例②夏も冬も快適な家
夏と冬の両方で快適さを目指した事例です。天井を高く取ることにより、夏場は暖められた空気が上昇し、東西に抜けるようにしました。
また、直接的な暑さを避けるため、深い軒を作っています。土壌蓄熱床暖房を使用しているので、冬は足元から暖かさを感じる住宅です。
事例③段差によって自然光を感じる家
大きさの異なる5つのハコを並べたデザインが特徴的な住宅の事例です。家の中にさまざまな形で段差を作ることにより、陰影が生まれるようにデザインされています。
部屋の南面に大きな窓があり、そこから差し込む自然光が段差を通して遠くまで届くのも魅力です。
事例④暑さが厳しい地域でも快適な家
夏に暑さが厳しくなる岐阜県可児市の事例です。開口部は南北面に絞りながらも、吹き抜けをリビングダイニングそれぞれに設けることにより、暑さ対策を行いました。
四季に応じた日射の取り込み方ができるように工夫されています。
参考:タイテル:可児の家
事例⑤解放感とプライベートを両立した二世帯住宅
一つのフロアをオープンにとることによって、通風と日射がたくさん取り入れられるような設計にした事例です。腰壁を設置することにより、横になった時や座った時は周りから見えないプライベート空間を作り上げました。
参考:タイテル:羽根北の家
パッシブハウスのメリット
パッシブハウスは、さまざまなメリットがあることから注目されています。代表的なメリットは以下のとおりです。
メリット①設備に頼らずに暮らせる
パッシブハウスは自然エネルギーを活用した家ということもあり、設備に頼ることなく快適な生活が目指せます。
例えば、近年は太陽光発電システムを導入する住宅が増えてきました。自宅で使う電力を太陽光発電でまかなうことにより、電気代節約が目指せます。パッシブハウスと太陽光発電システムを組み合わせるのも良いでしょう。
ただ、パッシブハウスについては、住宅性能を高めることによって太陽光発電システムを取り入れなくても冷暖房エネルギーを抑えることが可能です。機械や動力を使うことなく太陽の熱エネルギーを備蓄して暖かい家にするパッシブソーラーなどのシステムもあります。
メリット②冷暖房の使用頻度が減る
自然エネルギーを有効活用する分、冷暖房機器の使用頻度が減ります。補助的に使うような位置付けになるので、光熱費の節約効果があるのもメリットです。
メリット③健康的に暮らせる
パッシブハウスは外気の影響を受けにくい住宅です。そのため、急激な温度差を感じにくく、外気の影響による体調不良などを防ぐ効果もあります。健康的な生活を目指している方もチェックしてみてはいかがでしょうか。
パッシブハウスのデメリット
パッシブハウスにも、注意しておきたいデメリットはあります。特に以下の3つについてはよく確認しておきましょう。
デメリット①建築コストが高くなる
パッシブハウスは非常に機能性に優れた建物ではありますが、柱ハウスとして認められるためには、定められた厳しい基準を満たしていなければなりません。基準を満たすために使用できる材料などは限られていますし、専門的な設計監理を受ける必要もあります。
これらの理由から建築コストが高くなってしまいます。
ただ、ランニングコストが抑えられることもあり、長い目で見ると結果的に得をするケースも多いです。どの程度の費用がかかるかについては事前に良く確認しておきましょう。
デメリット②立地選びが難しい
立地によっては風や光をうまく取り入れることができず、パッシブハウスの大きな魅力である自然エネルギーが活用できないことがあります。そのため、立地選びが難しくなります。
デメリット③完成までに時間を要する
土地選びに苦戦するケースがあることに加え、設計も複雑になることから、完成するまでに時間を要します。場合によっては3年近くかかることも珍しくありません。
パッシブハウスは機能性に優れた家
いかがだったでしょうか。パッシブハウスが注目されている理由やメリット、デメリットなどについて紹介しました。非常に機能性に優れた家なので、暮らしやすさを感じさせます。ただ、注意したいポイントもあるので、よく検討しておきましょう。
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