家づくりに取り組む際、省エネ性能が高く、自然環境にもやさしい住宅設計に興味を持っている方もいるのではないでしょうか。そういった方から注目されているのが「パッシブデザイン」です。
ただ「どういったものなのかよくわからない」「本当に有効なの?」といった疑問を持っている方もいるでしょう。
そこで、パッシブデザイン住宅に興味がある方のため、重要な要素やメリット、デメリットを紹介します。この記事を読むことによってパッシブデザインならではの魅力がわかるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
パッシブデザインとは
パッシブデザインとは、省エネや、再生可能エネルギーの活用などを意識した家づくりのことをいいます。光や熱、風といった自然の力を活用することにより、地球への負担を抑えながら快適に過ごせる住宅設計が可能です。
例えば、室内外の温度差を利用して換気を行う「温度差換気」や、太陽の光が持つ熱エネルギーを活用して冬場にも暖かい環境をつくる「パッシブソーラー」などが挙げられます。
エアコンのように、人工的な風が苦手な方にも向いているでしょう。
自然エネルギーを活用して夏は涼しく、冬は暖かい家が目指せます。
パッシブハウスとの違い
パッシブデザインと混同されやすいのが「パッシブハウス」です。どちらにも「パッシブ」という言葉が入っていますが、それぞれ意味するものが異なります。
パッシブハウスとは、環境先進国であるドイツの物理学者によって発案された住宅理念です。環境について深く検討・配慮された家といえます。パッシブハウスを名乗るためには、ドイツのパッシブハウス研究所によって定められた省エネ基準を満たし、認定制度で認められなければなりません。
ですが、認定の条件は非常に厳しく、日本国内で認定を受けている住宅は非常に少ないです。
そういった中で注目されているのが、パッシブハウスの考え方を取り入れた「パッシブデザイン」です。
ドイツで発展した建築の設計手法であり、自然エネルギーを活用することにより、快適な住環境を作る目的のデザインです。
住宅の設計手法に関する概念であり、パッシブハウスのように性能基準は設けられていません。日本でも実現しやすいのはパッシブハウスといえます。
パッシブデザインにおける5つの要素
パッシブデザインは、断熱性能、日射遮蔽、自然風利用、昼光利用、日射熱利用といった5つの要素によって成り立っています。各要素の特徴は以下のとおりです。
①断熱性能
1年を通して快適に過ごすためには、断熱が欠かせません。室内外の熱の出入りを抑制することを目的として行われるのが断熱です。
高断熱の家は室温を一定に維持しやすいことから、断熱機能をもたない住宅と比較すると少ないエネルギーで室内の温熱環境を維持できます。
隙間から暖かい空気が逃げないように高気密構造であることも重要です。
少ない熱で部屋の室温を上げられる「省エネ性」、暖房をつけていなくても快適な室温が保たれる「快適性」、そして暖房をかけている部屋とかけていない部屋の気温差が抑えられる「健康性」、どの観点から見ても性能の高い住宅ができあがります。
参考記事:なぜ戸建ての二階は暑いのか?原因と対策方法をご紹介!
②日射遮蔽
冬場の断熱性に特化すると、夏は暑くて過ごしにくいことがあります。そういった場合に注目されるのが日射です。
軒や庇を長くするなど工夫することにより夏場の暑さが室内にこもるのを防げますが、これによって冬場の貴重な太陽光をさえぎるわけにはいきません。そのため、適切な庇の長さを設計し、そのバランスを計算、シミュレーションして調整します。
夏場だけでなく、冬場も快適に過ごすための家づくりに重要なポイントです。
参考記事:シェードカーテンのデメリットを解説!窓の形に合わせて選ぼう
③自然風利用
パッシブデザインは自然エネルギーを活用した家ということもあり、自然風を利用できるデザインであることも重要です。自然風を利用できる設計にすれば、適度に熱を逃がしながらも室温を適温に保つことが可能になります。
うまく自然風利用ができる住宅なら、特に春や秋などは冷暖房機器を使用しなくても自然風によって快適な室温を目指すことが可能です。また、自然風が循環しやすい住宅であれば、換気もしやすいです。
④昼光利用
日中、建物に十分光が入るようであれば明るい時間帯は電気を使うことなく過ごせます。そのため、省エネにも繋がるポイントです。
吹き抜けをつくるほか、リビングを2階にする、扉を透明にするなど、さまざまな工夫やシミュレーションが必要になります。
⑤日射熱利用
日射熱をうまく取り入れられる住宅であれば、暖房をそれほど使用しなくても部屋を暖めることが可能です。ゼロから暖房で暖めるのとは違い、太陽の熱をうまく利用しながら少ないエネルギーで室温を高められます。
よく使用されるのは、コンクリートやコンクリートブロックです。蓄熱性能に優れており、日中は熱を吸収し、室温が低下するとその熱を放出します。
建物の「集熱」「断熱」「蓄熱」機能をバランス良く整え、効率よく日射熱を取り入れられるデザインが重要です。
パッシブデザインにするメリット
パッシブデザインを選択することにより、さまざまなメリットがあります。代表的なメリットは以下の4つです。
メリット①SDGsに貢献できる
パッシブデザインは自然エネルギーを活かした住宅ということもあり、SDGsに貢献できるのがメリットです。冷暖房機器を使用することなく室温を快適に保ちやすいので、CO2の排出量を抑える効果もあります。
地球環境に優しい住宅を目指したいと考えている場合も、パッシブデザインの住宅について検討してみてはいかがでしょうか。
メリット②光熱費を節約できる
冷暖房機器を頻繁に使わなくて良くなるため、光熱費を抑えることにもつながります。一般的な住宅の場合、真夏や真冬など、寒さ・暑さが厳しい時期は冷暖房機器をフル稼働させなければなかなか快適な室温にできないことも多いです。
ですが、パッシブデザインの住宅であれば、日中に溜め込んだ日射熱のエネルギーを活用して夜暖かく過ごしたり、断熱機能によって室内の温熱環境を維持しやすくなったりするのがメリットです。
メリット③健康に配慮できる
パッシブデザインの住宅は体に優しく、健康に配慮できるのもメリットといえます。断熱機能や高気密構造、自然風利用などの要素を持っているパッシブデザインは、室温や湿度が1年を通して安定しやすいです。
そのため、冬場でも結露が発生しにくく、結露が原因で発生しやすいカビ・ダニなどの繁殖を防ぐ効果が期待できます。カビやダニは家の中の空気を汚してしまうので、健康に良くありません。
そのため、パッシブデザインの住宅を選択することにより、健康に配慮した生活に繋がります。
メリット④ゆったりと暮らせる
パッシブデザインではさまざまなことにこだわり、快適な生活に繋がるような環境を作り上げます。室内に居ながら自然の光や風を感じられるので、ゆったりとした気分で過ごせるでしょう。
四季の移ろいなども実感しやすく、リラックスできたり、温度変化に対応しやすくなったりする効果も期待できます。
パッシブデザインにするデメリット
パッシブデザインを選択しようと考えているのであれば、どのようなデメリットがあるのかについても確認しておかなければなりません。
代表的なデメリットは以下の3つです。
デメリット①従来の住宅よりも高い費用がかかる
まず、費用の問題が挙げられます。暮らしやすさや快適さにこだわった高性能の住宅ではありますが、従来の住宅と比較すると高い費用がかかるのはデメリットといえるでしょう。
これは、通常の住宅と比較して高気密・高断熱仕様にするための材料・工法で取り組まなければならないことが理由です。
ただ、建築時に初期費用はかかってしまいますが、将来的にみて光熱費を抑えられる効果が大きいので、総合的な目線で考えてみると良いでしょう。
デメリット②間取り・デザインに制限がある
パッシブデザインの住宅にするためには、自然エネルギーをうまく有効活用できるような形で間取りやデザインを考える必要があります。そのため、自分たちで間取りなどを考える際に選択肢が限られてしまい、予定していた通りの間取りを実現できなくなってしまうこともあります。
非常に細かい部分までこだわりぬいて間取りを設計したいと考えている方にとっては、向いていません。どの程度であれば希望を実現できるのか、代替案はあるのかなどについても相談してみてください。
デメリット③対応できない土地がある
自然エネルギーの力を有効活用するためには、その土地に合わせた形で設計・建築を行わなければなりません。
場合によっては自然エネルギーを有効活用するのが難しく、パッシブデザインに向いていない土地があることも考えられます。
アクティブデザインとの違い
「パッシブ」とは「受動」や「受け身」となどの意味を持っています。反対の意味を持つ言葉が「アクティブ」です。
アクティブデザインの住宅は機械や装置を活用することにより、積極性を持って自然エネルギーを利用できるようにしたデザインのことをいいます。例えば、太陽光発電システムやエコキュート・エネファームなどの設備です。
一方、パッシブデザインは家の建て方を工夫することにより自然エネルギーを活用できるようにしているのが大きな違いです。
パッシブデザインの特徴を理解した上で検討が必要
いかがだったでしょうか。パッシブデザインとは何か、どのようなメリット・デメリットがあるのかについて紹介しました。自然エネルギーを活用することにより、快適な生活を目指したいと考えている方にぴったりです。
パッシブデザインにも繋がる快適な空間づくりに役立つアイテムの一つとして、外付けブラインドが挙げられます。オスモ&エーデルでは省エネに効果的な外付けブラインドを販売しているので、ぜひご相談ください。