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今回は省エネ住宅の最先端ドイツの取り組みについてご紹介します。

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環境立国、省エネ住宅の最先端といえば、ドイツです。

ドイツでは法令の整備や財政支援策が積極的に実施されており、新築の建築物、既存の建築物いずれにも厳格なルールが設定されています。

この記事では、ドイツで設定されている法令の内容から財政支援策について、そして日本との違いについて解説します。

【ドイツ】建築物における自然エネルギー利用の法整備

ドイツでは、2020年11月に法整備が行われました。建築物省エネ法、建築物省エネ令、再エネ熱法の3つが統合され、建築物エネルギー法が制定されました。

その法令の中で、新築の建築物、既存の建築物、エネルギー性能証明書に関する規定がまとめられました。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

新築の建築物

ドイツにおいて、新築はすべて環境建築と呼んで差し支えありません。

そもそも環境建築とは、国が定めた省エネ政令の基準を満たした建築物のことを指し、日本と比べても非常に高い基準内容となっています。

実際、ドイツでは新築の建築物を建設する際には「最も低エネルギーの建築物」が義務化されています。

  • 年間一次エネルギー需要
  • 断熱
  • 自然エネルギー利用

これら3つの要件が設定されており、外皮区分別熱貫流率の上限値を規定しています。

まず、年間一次エネルギー需要の合計は、住宅・非住宅いずれも参照建築物基準値の75%を超えてはいけないことになっています。

そして、構造上の断熱によって冷暖房時のエネルギー損失が回避されていることと同時に、冷暖房エネルギー需要を自然エネルギーの利用で少なくとも一部がまかなわれていること、とされています。

新築建築物における、冷暖房需要に対する自然エネルギーの最低利用割合は種類別にみると15〜50%と幅があります。省エネ対策で代替の場合は、住宅・非住宅の熱還流率(U値)の規定を最低でも15%下回る必要があるとされています。

既存の建築物

厳格な規定が設けられているのは新築だけでなく、既存の建築物も同様です。

具体的には、外皮を改修する際に、建築物のエネルギー効率の質を低下させるような改修を禁止しています。

外皮区分別の熱貫流率(U値)の上限値が詳細に法で規定されており、公共建築物などの基礎改修時には、自然エネルギーの一定割合利用を義務付けています。これは一般の住宅建築物よりも厳しい基準となっています。

既存建築物の外皮改修を実施する際、各外皮の総面積が10%を超える場合は、定められた熱貫流率の上限値を超えてはいけません。ここでいう主な外皮区分とは、外壁、窓、ドア、天井、壁です。

エネルギー性能証明書

エネルギー性能証明書には、「需要証明書」と「消費証明書」の2種類があり、それぞれ発行・掲示・相談の義務があります。

「需要証明書」は、設計、仕様からエネルギー性能を計算するためのもので、「消費証明書」は実際の消費エネルギー量に基づいて性能を把握するためのものです。

新築時や既存建築物の改修時、売却や賃貸などにともなう所有者や利用者の変更時に発行が義務付けられています。

証明書には、年間最終エネルギー量に応じてA+からHの9等級で住宅のエネルギー効率が表示されており、その等級を見れば年間にエネルギー需要と消費がどのくらいなのか、具体的にかかるコストがいくらなのかがわかります。

【ドイツ】建築物における省エネの重要性

ドイツでは、建築物での省エネと自然エネルギーの利用を促進させるために、法律の整備や財政支援が行われています。

東西ドイツが再統一されてからというもの、国家として「環境にやさしい街づくり」を推進しており、とくにエネルギー利用量の約4割を占めている建築物は、ドイツの省エネを語るうえで外せない項目のひとつです。

また、ドイツでの最終エネルギーの約3割は家庭での消費であるとされており、建築物での最終エネルギーの4分の3は室内暖房で、とくに住宅での暖房消費が大半を占めています。

実際の数字でも表れているとおり、ドイツでは建築物における省エネルギーの重要性が非常に高いと考えられています。

参考記事:ドイツの住宅展示場と実際に暮らしている住宅を訪問。最新のドイツの住宅事情とは?

参考記事:省エネ住宅とは?メリットとデメリットを解説

建築物エネルギー法(GEG2020)

ドイツの建築物エネルギー法とは、建築物における断熱を外皮区分別に規定し、冷暖房エネルギーの需要に対して、自然エネルギーを利用することを義務付けたものです。

建築物エネルギー法(GEG2020)の目的

建築物エネルギー法では、目的として、建築物における暖房熱や冷却熱の生成、電気の生成に自然エネルギー活用を拡大することを含めて、建築物におけるエネルギーの最も効率的な利用を確保することと明記されています。

いわば、建築物において、自然エネルギーをより一層活用し、建築物のエネルギー効率化の考え方に含めているわけです。

また、経済の成長も同時に進める必要があることから、気候の保護、化石資源の保全およびエネルギー輸入への依存を低下させる観点から、連邦政府のエネルギーと気候政策の目的を達成するとともに、最終エネルギー消費に占める冷暖房のための自然エネルギーの割合をさらに増加させ、エネルギー供給の持続的発展の実現に寄与するものとする、としています。

つまり、同法は、ドイツが掲げる気候目標達成に寄与し、冷暖房での自然エネルギー利用を促進するためのもの、ということです。

「最も低エネルギーの建築物」義務づけ

新築の建築物の規定に関するところでも述べましたが、ドイツでは「最も低エネルギーの建築物」を建設することが義務付けられています。

それが冒頭でもお伝えした、総エネルギー需要、断熱、自然エネルギーの利用、それぞれについて要件が設定されています。

このうち、断熱と自然エネルギーの利用について解説します。

断熱:新築の外皮区分別の熱還流率規定

ドイツでは、新築の住宅・非住宅いずれにも、外皮区分別の熱貫流率の上限値が規定されています。

住宅においては熱貫流率の上限値が参照建築物の基準値を超えてはならない、と規定されており、非住宅では平均熱貫流率(Ū値)の上限値を超えてはならないとされています。

自然エネルギーの熱・冷却利用

新規の建築物を建設する際、冷暖房エネルギー需要に対して自然エネルギーの最低限の利用割合が示されています。

その割合は、種類別に15〜50%で設定されており、省エネ対策で代替する場合は、住宅と非住宅の熱還流率の規定を少なくとも15%下回る必要があります。

具体的な規定については下記にいくつか例をあげます。

  • 太陽熱:少なくとも15%
  • 自然エネルギー電力:少なくとも15%
  • 地熱エネルギー・環境熱:少なくとも50%

ドイツのこれまでの財政支援状況

自然エネルギーの熱利用と、建築物のエネルギー消費を効率化させるために、ドイツでは財政支援策を2021年に統合しました。

統合されるまでの、2006〜2020年末までをみてみると、ドイツ政府による財政支援では、エネルギーの効率化を推進するために、600万戸が新設・改修されました。

具体的な財政支援の例として、まずは市場活性化プログラムがあげられます。年間で400万ユーロを投じて、熱市場での自然エネルギー利用促進への支援が行われました。

続いて、CO2建築物改修プログラムというものがあり、既存建築物のエネルギー効率を高めるための改修を支援しました。

これらの支援策を統合する形で、2021年から「効率的な建築物のための連邦資金(BEG:
Bundesförderung für effiziente Gebäude)」に移行されました。

2005年からのエネルギー効率の高い建築物に対する支援額の推移では、減少する年もあるものの、総じて右肩上がりで伸長しています。

ドイツと日本のエネルギー政策における差

環境大国として世界のトップを走るドイツと日本を比較してみると、日本の遅れが浮き上がります。

実際、日本では「建築物省エネ法」という法律が制定されていますが、ドイツと違って自然エネルギー利用規定との統合は、現時点では進んでいません。

また、建築物における自然エネルギーの活用も太陽光発電に主眼が置かれており、給湯などへの自然エネルギー熱の活用も促進していくべきとの意見があります。

断熱規定についても世界の潮流から遅れています。日本では8つの地域に区分し、各建築物全体での平均熱還流率(UA値)の規定が設けられていますが、外皮区分別のU値上限値の法規定はありません。

窓面積の縮小なども実施されており、建材における各部位の性能を高めることに直結しにくいのが現状です。

さらに、新規建築物、既存建築物いずれにも性能を表示する制度が確立されておらず、当然ですが義務もありません。

財政支援についても、省エネ基準と自然エネルギー利用の組み合わせで支援額が決まる仕組みがないことに加え、住宅の個別設備改修に関わる支援規模自体が小さいことも課題といえるでしょう。

参考記事:日本の「窓」は世界から遅れている?断熱性能が低い理由とは

省エネ住宅先進国のドイツから日本が学ぶべきこと

ドイツは国をあげて、建物の省エネ化、自然エネルギーの有効活用に取り組んでいます。

整備された法令の内容や、積極的に進められている財政支援とその規模を見ると、ドイツが環境大国と呼ばれる所以もわかります。

一方、日本はまだ省エネ住宅、環境への対応が不十分といわざるを得ません。

人口や環境、文化も違うことから一概に比較するべきではないかもしれませんが、それでも省エネ性能を高め、環境にも家計にもやさしい建築物を増やしていくためには日本がドイツに見習うべきところも多いといえます。

今後、新たな建築を考えている人にもぜひ省エネ性能について理解を深めたうえで進めていきましょう。

オスモ&エーデルでは、高断熱の樹脂窓のご提案や、ドイツをはじめとする最新の住宅性能についてご相談に応じられます。ぜひ一度ご来店ください。

参考記事:なぜ戸建ての二階は暑いのか?原因と対策方法をご紹介!