新築住宅を建てようと考えられている方に向けて、省エネ住宅について詳しく解説いたします。
省エネ住宅は魅力的に感じるものでしょう。
しかし「税が優遇される?」「適合証明は?」「基準は?」と、さまざまな疑問をお持ちの方が多いようです。
そこで省エネ住宅について、種類ごとの特徴や税金の優遇、補助金についてなど、さまざまな観点から解説していきます。
2025年4月に義務化される新たな基準も解説しますので、これから住宅を建てるすべての方にとって参考となるはずです。

省エネ住宅とは?

「省エネ住宅」とは、エネルギー消費を抑えながら快適な暮らしを送れる住宅のことです。
家の中を快適な室温にできれば、冷暖房をつける機会が減ります。
冷暖房をつける機会が減ると、消費するエネルギー量も比例して減るものです。
つまり省エネ住宅とは、冷暖房をつけなくても快適に暮らせる家のことを指します。

3つの省エネ性能

省エネ住宅では3つの省エネ性能により、住宅内の室温を快適に保ちやすくする仕組みです。
そのため建設の際には、次のような3つの省エネ性能が重視されます。

省エネ性能1:断熱

まずは住宅内に外からの熱が伝わりにくくなるよう、断熱性能を高めます。
外の気温にともなって住宅内が暑くなるのは、壁・床・屋根・窓を通して、外から熱が移動してくるためです。
そのため快適な室温に保つには、熱が伝わる部分の断熱性を高めることがポイントとなります。
熱の移動を少なくできれば、外の気温による影響を受けにくくなります。


参考記事:なぜ戸建ての二階は暑いのか?原因と対策方法をご紹介!

省エネ性能2:日射

日射をさえぎることも省エネ性能のひとつです。
日射は室温を高める大きな原因となります。
そこで室内に入り込む日射の割合を少なくし、室温が上がりすぎないように工夫します。

省エネ性能3:気密

省エネ住宅における性能として、気密性も欠かせません。
気密性が高い住宅であれば、外からの熱は入り込みにくく、住宅内の暖かさも逃げにくくなります。
住宅に多くの隙間があると、熱を含んだ空気も移動してしまうもの。
省エネ住宅では気密性を高めることで、快適な温度の空気を確保します。

省エネ住宅の種類

一口に「省エネ住宅」と言っても、省エネ住宅には種類があります。
5つの種類について解説しますので、それぞれの違いや特徴について知っておきましょう。

種類①ZEH住宅

ひとつめの省エネ住宅は「ZEH住宅」です。
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称であり、エネルギー収支がゼロになる住宅のことを指します。
住宅の省エネ性能によりエネルギー消費量を抑え、創エネ設備によってエネルギーをつくり出せれば収支ゼロを目指せるはずです。
場合によってはエネルギー収支がプラスになる場合もあります。
以上のように電力会社からエネルギーを購入せず、住宅内でつくりだしたエネルギーを使用して生活できる住宅がZEH住宅です。

種類②LCCM住宅

続いてご紹介する「LCCM住宅」は、二酸化炭素排出量を削減できる住宅のことです。
「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」を略したのがLCCM住宅。
住宅の建設が開始され、完成した住宅で暮らし、最後に解体されるサイクルの中で、二酸化炭素の総排出量が少ない住宅です。

化石燃料から電力をつくる際にも二酸化炭素は発生します。
そのためLCCM住宅でも再生可能エネルギーによる発電ができるよう、太陽光発電システムなどが備えられます。
省エネと創エネにより、エネルギー収支ゼロを目指す住宅である点においては、ZEH住宅と変わりません。
ZEH住宅の基本に加えて、二酸化炭素排出量削減に考慮するのがLCCM住宅です。

種類③長期優良住宅

「長期優良住宅」も省エネ住宅のひとつです。
長く住み続けられる住宅をつくり、廃棄物の削減を目指すのが長期優良住宅の基本的な方針となります。
長期にわたり良い状態で住める住宅が求められるため、省エネ性能に加え、災害への配慮や劣化対策も重視されます。
エネルギー消費量の基準もZEHと同じレベルです。
長期優良住宅とは、より寿命の長いZEH住宅とも言えるでしょう。

種類④認定低炭素住宅

「認定低炭素住宅」とは二酸化炭素の排出量を減らせる設備・システムを備えた住宅のことです。
住宅の省エネ性能を高めることで、二酸化炭素排出量を減らします。
LCCM住宅と似ていますが、LCCM住宅よりも早く考え出されたのが認定低炭素住宅です。
そのためLCCM住宅よりも省エネ目標が低く、基準がゆるくなっています。
省エネ基準よりもエネルギー消費量10%以上の削減を目指す省エネ住宅です。

種類⑤スマートハウス

最後にご紹介する「スマートハウス」とは、IT技術を用いてつくりだしたエネルギーを利用する省エネ住宅です。
太陽光システムなどでエネルギーをつくりだし、蓄電池にためて利用するのは他の省エネ住宅と変わりません。
しかしIT技術を用いてより効率的にエネルギーを利用するのがスマートハウスの特徴です。
エネルギー消費量を管理する「HEMS(Home Energy Management System)」はスマートハウスの特徴的な設備と言えます。
以上のように、「省エネ×創エネ×IT」の組み合わせによって成り立つのがスマートハウスです。

長期優良住宅とは

先に解説したとおり、長期優良住宅とは長期間にわたり良い状態で使い続けられる住宅のことです。
主に次のような5つの特徴を備えています。

① 長期に使用するための構造及び設備を有していること
② 居住環境等への配慮を行っていること
③ 一定面積以上の住戸面積を有していること
④ 維持保全の期間、方法を定めていること
⑤ 自然災害への配慮を行っていること

出典:住宅性能評価・表示協会:長期優良住宅とは

その他の省エネ住宅では、長期にわたり使用できることや、住宅の面積は問われません。
「居住環境への配慮」の項目があるため、長期優良住宅にも省エネ性能は備わっています。
しかし重視されるのは、省エネ性能よりも「良い状態で長く使用できる家」となることです。

2025年4月に義務化される省エネ住宅の2つの基準

2025年4月から、省エネ住宅の2つの基準がすべての建物で義務化されます[1]。
義務化される2つの基準について見ていきましょう。

基準1:一次エネルギー消費量

まずは「一次エネルギー消費量」です。
一次エネルギー消費量の項目では、冷暖房・換気・照明・給湯の消費エネルギーが基準より低いことが求められます。
適合となるには、2025年3月以前までの省エネ基準を満たした住宅を建てなければなりません。
2023年現時点での一次エネルギー消費量の省エネ認定基準は等級4です。
2025年4月以降は、一次エネルギー消費量が等級4未満の住宅は不適合として建てられなくなります。

基準2:外皮性能

義務化されるもうひとつの基準は「外皮性能」です。
外皮とは住宅を覆う屋根・壁・窓・床などのことを指します。
外皮性能基準では外皮部分の断熱性能と日射隠蔽性能について、基準を満たすことが求められます。

贈与税が減額される基準

国では省エネ住宅を贈与された資金で建てたとき、贈与税の非課税限度額が高くなる措置も実施されています。
省エネ住宅に関する贈与税減額の条件は次のとおりです[2]。

【条件】

  • 令和5年12月31日までに贈与
  • 贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が2,000万円以下
  • 父母や祖父母など直系尊属から資金の贈与を受けること
  • 断熱性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上の住宅を建てること

一般住宅でも贈与税の非課税限度額は設けられています。
しかし省エネ住宅の非課税限度額が1,000万円であるのに対し、一般住宅では500万円までです[2]。
もし父母・祖父母から資金をもらって住宅を建てるなら、省エネ住宅を建てたほうがトータルでお得だと言えるでしょう。

省エネ基準適合住宅の調べ方

省エネ基準に適合した住宅であるかは、証明書により確認できます。
もし省エネ基準に適合しているなら、建設業者から証明書が受け取れるはずです。
「住宅性能評価書」「BELS評価書」などが基準適合の証明となります。

ただし証明書が受け取れない場合もあるかもしれません。
証明書が受け取れなかったときは、省エネ判定期間に依頼すれば調べてもらえます。
証明書が必要であれば、あらかじめ建設業者に伝えておくとスムーズです。

省エネ住宅の優遇制度

国では省エネ住宅を推奨しており、建てるとさまざまな優遇が受けられます。

優遇制度1:補助金

省エネ住宅建設には多くの補助金制度が制定されています。
代表的なものは次のとおりです。

【補助金制度】

  • こどもエコすまい支援事業:子育て世帯・若者夫婦世帯がZEH基準を満たす住宅を建てた場合、100万円を支援する[3]
  • 先進的窓リノベ事業:断熱性能に優れた窓に交換する場合、1戸あたり上限200万円を補助する[4]
  • 給湯省エネ事業:省エネ性能の高い高効率給湯器の設置で、1代あたり上限15万円までを補助する[5]

以上の3つは「住宅省エネ2023キャンペーン」において受けられる補助です。
他にも自治体による補助が受けられる地域もあります。
省エネ住宅を建てるなら、受けられる補助金制度を確認しておくと金銭的な負担を減らせます。

優遇制度2:税の優遇制度

省エネ住宅を建てるなら、税の優遇制度も見逃せません。
優遇される税制は、次のように幅広くなっています。

【優遇される税制】

  • 所得税の住宅ローン減税[6]
  • 認定住宅等新築等特別税額控除による所得税減税[7]
  • 不動産所得税の控除増額[8]
  • 登録免許税の引き下げ[8]
  • 固定資産税の減額[8]

それぞれ対象となる省エネ住宅の種類は違います。
うまく活用して、税の優遇制度を十分に受けられるようにしましょう。

省エネ住宅に住むメリット

それではあらためて、省エネ住宅に住むメリットについてご紹介していきます。

メリット①環境にやさしい

まずは環境にやさしい住宅が建てられるメリットがあります。
人が快適な生活をしていく中で、環境に負担をかけることは避けられません。
しかし省エネ住宅に住めば、エネルギー消費量・廃棄物・二酸化炭素排出量削減などに貢献できます。
特別な行動を起こさなくても、環境にやさしい生活を目指せるでしょう。

メリット②家計にやさしい

環境だけでなく家計にやさしいことも大きなメリットです。
多くの省エネ住宅では、一次エネルギー消費量を大幅に軽減できます。
一次エネルギー消費量を軽減できれば電気料金が抑えられ、結果的に家計への負担が減るはずです。

メリット③夏も冬も快適な室内温度を保てる

省エネ住宅では年間を通して、室内温度を快適に保ちやすくなります。
断熱性・気密性に優れていることは省エネ住宅の大きな特徴です。
外気の影響を受けにくいため、冷暖房に頼らなくても快適な室温を保てるでしょう。

メリット④ヒートショック現象を避けられる

ヒートショック現象を避け、健康的な暮らしができることもメリットです。
大きな温度差は血圧を急変させ、ヒートショックと呼ばれる症状を引き起こします。
しかし年間を通して快適な温度に保たれる省エネ住宅なら、ヒートショックが起こりにくくなります。

メリット⑤住宅が劣化しにくい

最後のメリットとして、住宅が劣化しにくいことをご紹介します。
日本の住宅が長持ちしないのは、結露によるカビや腐食が原因ともされています。
しかし省エネ住宅は結露が起こりにくい傾向です。
結果的に構造材や内装材が劣化しにくくなり、長く、快適に住み続けられる住宅となります。

省エネ住宅にはさまざまなメリットが

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、省エネ住宅についてご理解いただけたと思います。

省エネ住宅は環境にも家計にもやさしく、さらに快適な暮らしを与えてくれるものです。
また税の優遇や補助金が受けられることも魅力となるでしょう。

2025年4月からは、省エネ基準が義務化されます。
これから新築住宅を建てたいと思われている方は、ぜひオスモ&エーデルまでご相談ください。
精一杯のサポートをいたします。

[1]

参照:国土交通省:(PDF)2025年4月(予定)から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます

[2]

参照:国土交通省:住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置

[3]

参照:住宅省エネ2023キャンペーン:こどもエコすまい支援事業事業概要

[4]

参照:住宅省エネ2023キャンペーン:先進的窓リノベ事業事業概要

[5]

参照:住宅省エネ2023キャンペーン:給湯省エネ事業事業概要

[6]

参照:国税庁:No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

[7]

参照:国税庁:(PDF)令和4年分認定住宅等新築等特別税額控除を受けられる方へ

[8]

参照:国税庁:認定長期優良住宅に対する税の特例