旧旅館を再生し、村の新しい「ロビー」へ
― 山梨県小菅村、建物の記憶を受け継ぎ、人と地域をつなぐ交流拠点「kadoya」

多摩川の源流に豊かな自然と美しい山里の風景が広がる、山梨県小菅村。
その村の中心部で、かつて村の人が集い、旅人を迎えてきた「かどや旅館」が、このたび宿泊・カフェ・コインランドリーなどの機能を備えた交流拠点「kadoya」として、新たな歩みを始めました。
昔から親しまれてきた建物の記憶を残しながら、新しい人の流れを生み出す場所へ。

今回、施設の再生に携わった小菅村役場 源流振興課の舩木様、kadoyaの関口様、馬場設計の田中様に、施設に込められた想いや、実際に使い始めて感じる空間の魅力についてお話を伺いました。

右から、小菅村役場 源流振興課の舩木様、kadoyaの関口様、馬場設計の田中様右から、小菅村役場 源流振興課の舩木様、kadoyaの関口様、馬場設計の田中様

 

小菅村の地方創生と「関係人口」を支える、新しい交流拠点

小菅村は、かつて2,000人以上が暮らし、個人商店や旅館が並ぶにぎやかな村でした。
村の中心部にあった「かどや旅館」も、人々が集まる大切な場所の一つ。
ところが、人口減少が進む中で「かどや旅館」が閉館することとなりました。

舩木様は、村の真ん中にあった「集まる場所」がなくなったことに、過疎化の現実が象徴されているように感じていたとお話ししてくださいました。
村では、旧かどや旅館を、建物に残る記憶を生かしながら、村に住む人と村外から訪れる人をつなぐ新たな拠点として再生することを決めました。

小菅村は山々に囲まれた自然豊かな村です。
村では以前から、村外の人が地域と継続的につながる「関係人口」を大切にし、地方創生の取り組みを進めてきました。

舩木様は、村外から村を訪れる人、村外に住みながら地域の活動を支えてくれる人とのつながりを育てることが大切だと話します。
住む人だけで地域を支えるのではなく、継続して関わる人とともに村の暮らしを維持していく。
それが、小菅村の関係人口施策の背景にあります。

その一つが、住んでいなくても村と関わることができる「1/2村民(2分の1村民)」(※)という考え方です。
「こすげ村人ポイントカード」(※)を通じて村を訪れるきっかけをつくり、地域の活動や行事への参加につなげています。
村を好きになり、何度も訪れ、地域を支えてくれる人とのつながりを育てることが、小菅村の目指す地方創生です。

取材時点で「1/2村民」は約4,500人にのぼるとのこと。
こうした方々が地域の行事やボランティア活動に参加する際、少人数でも気軽に泊まれる場所が少ないことが課題でした。
その中でkadoyaには、訪れた人が気軽に泊まることができ、村の人と出会うための拠点という役割が期待されています。
また、村民にとっても、いつもの暮らしの中で立ち寄れる場所であることが大切にされています。

目指したのは、観光客だけが訪れる施設ではありません。
初めて訪れた人には村の暮らしに触れる「入口」、何度も通う人には関係を深める「きっかけ」、村民にはふらっと立ち寄れる「日常の場所」。
その三つが重なり、自然と会話が生まれる「村のロビー」です。

 

※「1/2村民(2分の1村民)」とこすげ村人ポイントカード: 
小菅村に住んでいなくても、村に関心を持ち、継続的に関わる人々のこと。
小菅村では「こすげ村人ポイントカード」を通じて村とのつながりを育み、地域行事やボランティア活動への参加などを促進しています。
村外の人々にも村づくりに関わってもらうための、関係人口施策の一つです。

参考ページ:https://ko-kosuge.jp/pointcard

新しくなっても、変わらず感じられる「かどやらしさ」

建物の改修では、安全性やこれからの使い方に配慮しながら、かつての旅館の面影をどう残すかが大切にされました。
特徴的な格天井(ごうてんじょう)や木の梁、柱など、既存の建築要素を生かすことで、新しい設備や内装の中にも、長く親しまれた場所の記憶が息づいています。

もっとも、既存建物の再生には、新築とは異なる難しさがありました。
実施設計と工事監理を担当された馬場設計の田中様によると、敷地と河川区域との境界を確かめることや、既存建物の法的な手続きの確認など、着工前からさまざまな対応が必要だったそうです。

工事が進むと、解体して初めて判明する建物の状態もありました。
基礎や土間など、当初想定していなかった部分への対応を重ねながら、残す部分と改修する部分を検討。使い続けるための安全性を確保しつつ、かどや旅館らしい格天井や梁、柱を生かす計画が進められました。

設計を担当した田中様は、既存の木と、耐震補強のために加えた新しい木との調和も大切にされました。

残されていた木部には、赤みを帯びた色やアイボリーなど、過去に施されたさまざまな塗装があり、一部には光沢も見られたそうです。
こうした既存の木部をどのように仕上げるかが、塗装にあたっての課題の一つでした。
そこで、内外装木部の仕上げに採用したオスモカラーを現場でテスト施工し、実際の仕上がりを確認。既存の木が持つ凹凸や質感を生かしながら、新たに加えた柱やブレースとも調和する仕上がりを実現しました。

馬場設計・田中様

「もともとの木が持つ味わいや質感を残すことができ、よい仕上がりになりました。また、耐震補強のために新たに加えた木材と既存の木材が混在していますが、新しい木と古い木がうまく調和し、違和感のない仕上がりになっています。」

開業後、村民の方から寄せられたのは「きれいになって、すごくいいね」という声とともに、「昔の面影が感じられる」というお声だったとのこと。

kadoyaの関口様によると、子どもの頃に旅館の宴会場で遊んだことを思い出し、「梁が残っている」「木の香りもする」「以前のかどや旅館の雰囲気が感じられていいね」と話してくださる方もいるそうです。

kadoya・関口様

「そういう思い出の話が村民の方から自然に出るのって、こういう空間だからだなっていうふうに思います。」

舩木様も、建物をきれいにするだけではなく、かどや旅館らしさを残してほしいという村民の願いが、完成した空間から感じられることをうれしく思っているとお話ししてくださいました。

既存の格天井と梁・新旧の柱(オスモカラー塗装)既存の格天井と梁・新旧の柱(オスモカラー塗装)

木の床と、受け継がれた木の家具がつくる居心地

1階カフェにはオスモカラー純正塗装のオスモフローリング「ユニオークナチュラル(シルキー)」、2階客室・廊下・共用スペースには「ユニセイナンバーチナチュラル(シルキー)」が採用されています。

田中様は、以前に設計された保育園やご自宅でもオスモフローリングを使用し、その良さを実感されていました。
今回の1階カフェでは、当初の基本設計で別の床仕上げが計画されていましたが、工事費用の増加に伴って仕様の再検討が必要になりました。
そこで、予算だけでなく、施工性や耐久性、空間との相性も踏まえて、オスモフローリングを提案されたそうです。
予算の制約がある中でも、仕上がりや使いやすさを考えて材料を選ぶ。
その判断が、木のぬくもりを感じられる現在のカフェ空間につながりました。

客室でも、木の床が落ち着いた雰囲気をつくっています。
寝具には、山梨県富士吉田市の寝具ブランド「sinso」のものを採用。
太陽の光や土、大地の色をイメージしたマスタードイエローとブラウンのベッドリネンが、木の表情ともやわらかく調和しています。

2階客室(sinsoの寝具とセイナンバーチフローリング)2階客室(sinsoの寝具とセイナンバーチフローリング)

カフェの家具にも、空間の記憶が息づいています。
かつて旅館で使われていた畳の下地板や廊下の板などが、テーブルや椅子として生まれ変わりました。
木の床と古材を使った家具が一緒になることで、新しさと懐かしさが共存する、kadoyaならではの空間が生まれています。

家具の製作には、古材の再利用に取り組むREBUILDING CENTER JAPANが携わっています。
かつて旅館の廊下に使われていた板材などが、家具という新しい役割を得て、再び館内で使われています。
建物の一部だった木が、今度は人々の集う場所を支える家具になる。
そんな再利用の仕方にも、旧かどや旅館の記憶を受け継ぐ工夫が感じられます。

kadoya・関口様

「木の空間でよかったなって思います。この木の空間によって、村のロビー感が出ていると思います。私たちも働きながらこういう木のぬくもりを感じられるのがすごくうれしいです。」

利用のお客様からも、「新しいけど新しくないみたいな感じがする」という声が多いのだそう。
以前の旅館を知る村民のみなさまにも、初めて訪れる方にも、気負わずに過ごせる居場所になっていることがうかがえます。

「お手入れがしやすい」―運営の現場で感じる安心感

毎日、たくさんの人が利用するカフェや宿泊施設では、空間の見た目だけでなく、清掃や維持管理のしやすさも重要です。
関口様からは、オスモカラー純正塗装のフローリングについて、実際の使用感をお聞きしました。

カフェは夜にバーとしても利用され、飲み物をこぼす場面もあります。
そうしたときも拭き取ることできれいになり、扱いやすさを感じているとお話ししていただきました。
客室でも、日々の清掃や汚れへの対応について安心感があると話してくださいました。

1階と2階の床材の樹種が異なることについて、毎日掃除をしていると1階と2階の木の表情の違いがわかり、その違いを面白く感じるとのこと。
お客様にとっても、1階と2階の樹種の違い、1階は土足のカフェ、2階は靴を脱いで過ごす空間という使い方の違いも、心地よい切り替えにつながっているのではないかとお話ししていただきました。

1階カフェのユニオークナチュラルフローリングと2階共有スペースのユニセイナンバーチナチュラルフローリング1階カフェのユニオークナチュラルフローリングと2階共有スペースのユニセイナンバーチナチュラルフローリング

小菅村に魅せられた、kadoyaのスタッフのみなさま

kadoyaの魅力を支えているのは、建物や空間だけではありません。
そこで働くスタッフのみなさまも、kadoyaの魅力の一つです。
そして、kadoyaで働くスタッフのみなさまも小菅村という地域に魅力を感じ、この村に関わっていらっしゃいます。

関口様は、大学時代から地方創生に関心を持ち、インターンシップで小菅村を訪れたことが、この村との出会いになりました。とりわけ心に残ったのは、村の人たちの温かさだったといいます。

kadoya・関口様

「インターンをした時の仕事もすごく楽しかったんですけど、小菅村の方たちがすごく温かく接してくださったのが印象的でした。」

看護を学んでいた関口様は、地域が抱える課題にも触れる中で「看護師の資格を持った私だからこそ何か役立てることがあるんじゃないか」と考えるようになり、小菅村で働く道を選ばれました。
ほかのスタッフのみなさまも、地方創生への関心をきっかけに村外からいらっしゃったそうです。

地方創生に関心を持つ若い世代が、村の魅力や人の温かさに惹かれ、新たな担い手になっていること。
そうしたkadoyaのスタッフの方たちと小菅村のみなさま、訪れる人たちの交流が、kadoyaの「村のロビー」としての役割を少しずつ育てている様子をうかがうことができました。

村の人と訪れる人が自然に出会う、これからのkadoya

kadoyaは、宿泊やカフェだけでなく、村民の声を受けて設けられたコインランドリーや、お子さんを見守りながら過ごせるスペースなど、日常に寄り添う機能も備えています。
村の方がkadoyaのスタッフの方に会いに立ち寄ったり、親子連れがゆっくりお茶を楽しんだり、村のみなさんはもちろん、近隣の宿泊施設を利用される方がコインランドリーに足を運んだり。
さまざまな使われ方が少しずつ広がっています。

コインランドリーとキッズスペースも備えた多目的スペースコインランドリーとキッズスペースも備えた多目的スペース

コインランドリーは、事業に先立って行った村民ワークショップで、最も要望が多かったそうです。
山あいの暮らしで身近に必要とされる機能が、施設の計画に取り入れられました。

開業後は村民だけでなく、隣の村から訪れる方や、周辺旅館の宿泊客にも利用されています。
夏の合宿シーズンには、近隣旅館に泊まるお子さんたちのユニフォームを洗うために使われることもあるそうです。
地域の声から生まれた設備が、周辺施設を支える役割も果たしています。

小菅村が進める関係人口施策の考え方は、kadoyaの運営にもつながっています。
村を訪れ、地域の活動に参加し、関係を深める人々が、ゆっくり滞在して交流できる拠点。
その一方で、村民の方が日常的に使い続けることも、欠かせない役割です。

また、宿泊や多目的スペースの使い方も少しずつ広がっています。
大学のゼミ活動や企業研修、事業に関わる方々の滞在など、開業後の利用を通じて新たな需要が見えてきました。
関口様や舩木様のお話からは、訪れる方々の使い方に合わせて施設の役割を育てていく様子もうかがえました。

小菅村役場 源流振興課・舩木様

「何より大事なのは村民が日常的に使う場所であり続けることです。観光客だけの施設になると、「村のロビー」ではなくなってしまいます。村の人がいるからこそ、外から村を訪れた方も小菅村らしさを感じられるのだと思っています。」

豊かな自然に囲まれた小菅村の風景豊かな自然に囲まれた小菅村の風景

多摩川の源流に広がる豊かな自然、釣りやキャンプ、アスレチックなどのアクティビティ、伝統的なお祭りや村民体育祭などのイベント。
小菅村には、訪れる人を惹きつけるさまざまな魅力があります。

今回の取材でとりわけ印象に残ったのは、小菅村に関わる人々の熱意と温かさでした。
地域の未来を見据えて地方創生に取り組む村のみなさま、村の魅力に惹かれて集まったkadoyaのスタッフのみなさま、そして小菅村を訪れる人々。
また、さまざまな課題を乗り越え、建物の記憶を受け継ぎながら新たな交流拠点をつくり上げた設計者をはじめ、プロジェクトに携わった方々の熱意と尽力も、深く印象に残りました。
豊かな自然と、人々の温かさ、地域の未来を想う熱意。
今回、小菅村のさまざまな魅力に触れるとともに、人と人とのつながりを大切にする「村のロビー」kadoyaの魅力を実感する訪問となりました。

 

■kadoyaホームページ
https://kadoya-kosuge.jp/

■小菅村ホームページ
http://www.vill.kosuge.yamanashi.jp/

■株式会社馬場設計ホームページ
https://babasekkei.co.jp/

採用製品

【オスモカラー純正塗装 オスモフローリング】
1階カフェ:#51090 ユニオークナチュラル 90mm幅 シルキー
2階客室・廊下・共用スペース:#59121 ユニセイナンバーチナチュラル 120mm幅 シルキー

【木材保護塗料 オスモカラー】
内外装木部(梁など):オスモカラー カントリーカラー チャコール

■オスモ&エーデルフローリング 
https://osmo-edel.jp/product/osmoholz/

■オスモカラー 
https://osmo-edel.jp/product/osmocolor/

オスモ&エーデル広報部

この記事を書いた人

オスモ&エーデル広報部
みなさまのより良い住まい作りのご提案やアイデアを発信しています。オスモ製品のニュースや商品解説も今後おこなっていく予定です。ぜひご期待ください。
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