メルセデスベンツやBMWなど、世界的な車メーカーを上げれば多々メーカー名が思いつくほどの自動車王国ドイツ。
車だけでなく、髭剃りのブラウンや筆記具のモンブランやラミー、カメラのライカなど私たちが憧れるブランドが沢山あります。
なぜドイツ人が作る製品には私たちを魅了する魅力があるのでしょうか。
ドイツの文化や気質、習慣には日本人の私たちとはずいぶんと違った価値観があることを知り、その価値観がものづくりに影響を与えているのではないだろうか。
そんな思いから、少し考察をしてみました。
目次
こうでなければならないというドイツ人の気質。
ドイツ人の考え方の一つとして、物事を合理的に考えるという気質があります。
車は走るものだから、走りに拘らなければ意味がない。
筆記具はものを書くものだから書き心地に拘らないと意味がない。
要するにその製品の本質的な品質の追及という事。
沢山の機能を持たせるとか、更にコンパクトにするだとか、製品改良をすること自体は良いのですが。
本質的な品質への影響と天秤にかけるとなると、やはり本質的な品質の向上を選ぶのだと考えます。
髭剃りとは的確に髭が剃れなければならない。
筆記具とは書き心地がよくなければならない。
こうでなければならないという本質の追及が名だたるブランドを生み出す気質として根付いているように思います。
ドイツの教育システムによる影響。
ドイツの教育システムには昔ながらの徒弟制度が色濃く反映されています。
高等教育を学ぶギムナジウムと職業訓練校であるリアルシューレ(実科学校)と大まかに2つの進学コースに分けられているのですがその特徴は、10歳前後の年齢でどちらの進学コースを希望するのか決めなければならないという事。
この年齢で誰もがある程度の自分の将来設計を決めなければならないという少々酷な教育システムなのです。
ドイツでは義務教育を受ける年齢(6歳)でグルントシューレと言われる基礎学校に入学します。
基礎学校は4年制で、約10歳を迎えた子供たちは基礎学校を卒業。
その後、2つの道を選ばなければなりません。
1つはギムナジウムと言われる大学に進学するための学校。
いわゆる中高一貫教育に近いもので9年間通う事になります。
もう1つが職業訓練校。
職業訓練校に通う学生は週1~2日ほど学校で学び、残りの日は企業での実習を行う事で実務で必要なスキルを学びます。
また、大学に通う学生も3か月以上のインターンシップを経験した後、就職することが一般的で、どちらも学校を卒業した時点で国家資格である「ゲゼレ」という資格を取得することが目的となります。
一人前として育つまでは見習いとして、就学中にプロの仕事を学ぶのです。
ですから、学校を卒業した時点で、すでにプロとして手に職が就いている状態。
これが、ドイツの知識と実務とを学ぶデュアルシステムと言われるものなのです。
プロを育成するこの教育システムがドイツ品質そのものの基礎になっているのだと思うのです。
スペシャリストを育てるマイスター制度と資格。
ドイツの職業は資格制度が厳しく、「ゲゼレ」や「マイスター」と言われる資格がないと職に就けないケースが多い。
手工業マイスターで94種類、工業マイスターで300種類以上の国家資格があり、塗装工や大工、足場けた組職人やパン職人、暖炉職人なる資格まで国家資格なのです。
このような資格社会のドイツでは資格保持者に敬意を払うという意識もあり、資格保持者のプロ意識が非常に高いという事もドイツ製品の品質の良さにも繋がっているような気がします。
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ドイツ人の持つ自己責任と価値観。
ドイツでは電車に乗る際、改札口というものがありません。
ですので切符を買わなくても、電車に乗車することが出来るわけですが、切符を買わないで無賃乗車がばれると多額のペナルティを支払う事になります。
切符を買おうが、買わまいが、すべては自己責任であり、社会ルールを守る事が前提となっているのです。
そんな社会ルールの中で培わせた自己責任の強さがものづくりに影響を与えているのだと感じます。
そしてドイツでは自分で価値を決めるという考えがあります。
物事の判断は自分にとって価格に見合った価値があるものなのか。
例えば100万円でも自分にとって価値あるものであれば高いとは思わない。
また、自分にとって価値のないものはいくら安くても買わない。
そして、日常的によく使うモノや道具はケチらない。
このようなドイツ人特有の価値観もものづくりの品質に反映しているのでしょう。
これがドイツ人の持つ価値観なのです。
まとめ
ドイツのこだわりが生んだロングセラーのブランド達。
私たちが憧れるような製品を生み続け、時代を超えて、今でもトップブランドとして生き抜くその品質へのこだわりの根源とはどこにあるのか。
その元を紐解いていくとドイツ人の持つ価値観が大きく影響しているように思います。
ドイツの教育の仕組みも、マイスターという資格制度も、そして徒弟制度と文化においても、その根源はドイツ人の価値観から来ているのもだと感じるのです。