塗装の出来上がりを左右するのは、被塗装物の状態や塗料の質だけではありません。調色がうまくいくかどうかも、外観に大きく影響します。理想的な出来栄えを実現するために、調色からこだわりたいと考えている方もいるでしょう。

既存の色同士を混ぜると聞くと、調色作業は簡単なものに思えますが、実際はそうではありません。ステップごとに進めながら、いくつかのポイントを把握しておく必要があります。

そこで本記事では、塗装の要となる調色のコツや必要な道具、具体的な調色方法などを解説します。納得のいく塗装のために調色までこだわりたい方は、ぜひ参考にしてください。

調色とは?

調色とは、色と色を混ぜ合わせて新しく色を作るプロセスのことです。調色は美術やデザイン、印刷、塗料など幅広いシーンで用いられています。例えば、多くの人が経験したことがある、赤色と青色の絵の具を混ぜて紫色を作り出す工程も、調色となります。

調色のメリットは、自分好みのオリジナルのカラーを作り出せる点です。日本塗料工業会(日塗工)が発行している「塗料用標準色(色を確認できる見本帳)」には、全654色が掲載されています。(2023年12月時点)単に青色と定義するのではなく、濃淡の程度や艶の有無、色相・彩度などで細かく分類されているためこれほど多くの色が存在していますが、調色により生み出される色は非常に多く、標準色の比ではありません。

例えば、同じ色を混ぜる場合でも、その配合割合によって出来上がるカラーは異なります。赤色と青色を1対1で混ぜると標準的な紫色ができますが、赤を多くすると赤紫色に、青を多くすると青紫色になります。

また調色により基本色からさまざまな色を生み出せれば、塗料の購入コストを抑えられる点もメリットです。複数の塗料を購入する必要がなくなるため、コストパフォーマンスにも優れています。

※参考:日本塗料工業会.「JPMA:2021年L版 塗料用標準色」.

https://www.toryo.or.jp/jp/color/standard/2021L.html ,(入手日 2023/12/19).

調色に必要な道具

調色する際は、以下の道具を揃えてください。

  • 試し塗り用のパレット
  • 塗料を混ぜる棒
  • 調色用の塗料

いきなり被塗装物に塗料を塗ると、失敗した際の後処理が面倒なのでおすすめできません。まずは試し塗り用のパレットに塗って、実際にどのように見えるかを事前に確認しましょう。色だけでなく、塗料の質感や光沢具合、艶の感じも把握できます。

塗料を混ぜる棒については、細長い形状のものであれば問題ありませんが、塗料用の混ぜ棒として特化したものだとより均一に撹拌できます。

最後に忘れてはならないのが、調色用の塗料です。ベースとなる塗料の白に加えて、黒・赤・黄・青の5色を用意しましょう。これらがあれば、基本的にはほとんどの色を作れます。

【基本ステップ】調色方法

具体的にどのようにして調色していけばよいのか、分からない方もいるでしょう。その場合は、以下のステップに従って進めてください。

  1. ベースの色を決める
  2. 明るさを調整する
  3. 三原色を選択する
  4. 最終調整

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

①ベースの色を決める

調色するにあたって、まずはベースとなる色を決めます。作りたい色から逆算して選ぶのがポイントです。理想の色に近い色を最初から選ぶことができれば混色作業もスムーズにいくので、ベースの色選びは慎重に行ってください。

しかし塗料の調色に慣れていない場合は、ベースの色を決めるのが難しい可能性も考えられます。その場合は、以下のステップに従って基本色を選択しましょう。

  1. ベースカラーに近いと思う色を1つ選ぶ
  2. 2番目に近いと思う色を2つ選ぶ
  3. 選んだ3色を作りたい色の上に一定の間隔を確保して並べる
  4. それぞれの色を見てどの色が作りたい色に近いかを選ぶ

上記のステップを踏んでベースの色を選定すれば、大きく失敗するリスクを減らせます。

②明るさを調整する

ベースの色を決めたら、続いては色の明るさを調整します。このステップではステップ1で選択したベースの色を、目指す色の明るさに近づけるために充填剤や塗料を加えます。最初からベースの色と理想の色が全く同じというケースは少ないため、精細な明度の差を慎重に調整しながら、全体の色調のバランスを取っていきます。

明るさを調整する充填剤や塗料にはいくつかあるので、目的に合わせて適したものを選びましょう。例えば、明るさを上げたいなら着色力と隠蔽力が強いチタニウムホワイトを、暗くしたいならアイボリーブラックを加えるなどです。

明るさの調整は、色の質感や深みを大きく左右し、調色の成否の要となる重要なプロセスの一つです。明るさを調整するための充填剤や塗料を加え過ぎると理想の色から遠ざかることも考えられるため、慎重に作業を進めていきましょう。

③三原色を選択する

ベースの色の選定と明るさを調整したら、次に三原色を選択します。三原色とは、プリンターのインクなどに使われる赤紫(マゼンダ)・青緑(シアン)・黄の3種類の色です。この3色を調整して混ぜ合わせると、多くの色を再現できるとされています。

既に決定したベースの色と調整した明るさは最終的な色調の基盤となるので、ここに三原色を加えて微調整します。ここでは作りたい色に含まれる三原色を特定した上で、少しずつ加えていくのが重要です。例えば、冷たい印象に仕上げるなら青緑(シアン)を、暖かみのある色調を目指すなら赤紫(マゼンダ)や黄を多めに加えます。

④最終調整

ステップ3までで調色は完了していますが、理想とする色に近づけるために最終調整します。微調整しながら三原色を適切に配合することで、色相と鮮やかさの深みが増し、より多彩なバリエーションが生み出されます。

調色のコツ

調色の基本ステップは先述した通りですが、以下のコツを押さえることでより満足のいく調色を実現できるでしょう。

  • 色の配分をある程度考えてから調色する
  • 暗くしたいからといって黒や濃い茶系を選ばない
  • 色味によってパレットを分ける
  • 混ぜ合わせる色の数を増やし過ぎない
  • 慣れないうちは試し塗りを繰り返す
  • 色の調合表を使用する
  • 自然光の下でも確認する
  • 乾いてからの見え方も確認する
  • 難しい場合はプロに依頼する

それぞれのコツを詳しくご紹介します。

色の配分をある程度考えてから調色する

いきなり調色し始めるのではなく、色の配分をある程度考えてから配色しましょう。

まずは作りたい色をイメージしながらどのような色が含まれているかを考え、多く含まれていると考えられる色から、ベースとなる塗料に加えていきます。このとき、黒や赤など色味が強い色は少量でも塗料全体の色が大きく変化するので、少しずつ加えていくのがポイントです。

またしっかりと塗料同士を混ぜ合わせるように意識してください。十分に混ざりきっていないと、塗装作業を進めるうちに色が変化する可能性があります。

暗くしたいからといって黒や濃い茶系を選ばない

塗料を暗くしたい場合、黒や濃い茶系を使うことが選択肢に挙がりますが、安易に混ぜるのはおすすめできません。こうした色を混ぜるとトーンが大きく関わり、意図したイメージよりはるかに暗くなる恐れがあるためです。それまでうまく色を調整できていても、黒や濃い茶系を混ぜるだけで台無しになる可能性もあります。

暗くしたい場合は黒や濃い茶系以外の選択肢として、相補色を混ぜる方法があります。相補色を混ぜると真っ黒ではなく濁ったグレーとなるので、こうした方法で少しずつ調整しましょう。

色味によってパレットを分ける

調色作業では、色味に応じてパレットを使い分けるのも重要です。こうすることで意図せず色が混ざり合うのを避けることができます。また各色味で混和せずに分けておくことで、細かい色彩の調整もしやすくなります。

大まかに白系とそれ以外の色で分けておくのがおすすめです。パレットには多めに塗料を出して、少しずつ混ぜながら理想の色へと近づけていきましょう。

混ぜ合わせる色の数を増やし過ぎない

調色する際は、混ぜ合わせる色の数を増やし過ぎないようにしましょう。2つ以上の色を混ぜる際の色の生じ方を減算混合といい、それぞれの色の彩度が下がります。混ぜる色が多ければ多いほど、意図しない変化を遂げることがあり、理想の色から遠ざかることになります。

そうならないよう、先述したように色味ごとにパレットを分けて少量ずつ混ぜたり、ブラシに残った塗料同士が混ざらないように頻繁に洗浄したりするなどの対策を取ってください。

慣れないうちは試し塗りを繰り返す

調色は最初のうちは難しいので、試し塗りを繰り返して徐々に慣れていくのが重要です。さまざまな色を組み合わせたり、色の配合割合を変えたりしながら意図した色合いを実現できるようにしましょう。試し塗りを繰り返していくと、調色のコツを次第に掴めてくる他、同時に塗り方の要領も得られます。

また例え調色に慣れてきたとしても、見た目を大きく影響する重要な箇所を塗る際には、まずは試し塗りをしてから実際に塗布するのが無難です。試し塗りでイメージと異なると判明した場合は、微量ずつ塗料を足していきましょう。

色の調合表を使用する

色の調合表(原色配合率表:color matching formulation)とは、異なる色同士をどの程度の割合で配合すると、指定の色が得られるかを示した表です。調色する際は、色の調合表を活用するのがよいでしょう。

調合表を活用することで、特定の色を作るために必要な色とその配合割合を把握できます。一貫した配色結果を得られるため、色の再現性が高まるでしょう。

ただし、塗料メーカーによって若干色味が異なる分、全く同じ割合で混ぜ合わせても調合表と完成した色が少々異なる可能性がある点は認識しておきましょう。配合割合は、あくまでも参考程度にしてください。

自然光の下でも確認する

調色したら室内灯だけでなく、自然光の下でも確認してください。照明条件によって、色の見え方が異なるためです。また自然光の場合、時間帯によっても色の見え方は異なります。

調色は彩度や明るさを微調整しながら行う、繊細な作業です。さまざまな場所や時間帯で色を確認するようにしましょう。

乾いてからの見え方も確認する

塗料の種類にもよりますが、艶あり塗料は乾燥すると液体時と比べて色が濃くなります。業界用語で「色がのぼる」と呼ばれるこの現象は、塗膜の表面に比重の小さい顔料が浮き出ることで生じます。

調色直後の塗料が理想の色とマッチしていても、乾燥すると違った色になる点には注意しなければなりません。このことを念頭において、調色する際は完全に再現するのではなく、少し薄めに作っておくのがポイントです。

難しい場合はプロに依頼する

異なる色同士を混ぜ合わせて新しい色を作るという一見単純にも思える調色は、ここまでご紹介したように数多くの手順やコツがあります。いずれも理想の色を実現するためには押さえておきたいポイントであり、いずれかが欠けると満足のいく仕上がりにならない可能性もあるでしょう。

しかし全ての要点を掴んで調色をスムーズに行うのは容易ではありません。DIYで調色するのが難しい場合は、プロの塗装専門業者に依頼するのも一つの選択肢です。塗装業者であれば調色に関する知識や経験が豊富なのはもちろん、専用の道具も持っているため、DIYで調色するよりも高いクオリティで仕上がる可能性が高まります。

まとめ

本記事では、調色の概要や基本ステップ、満足いく仕上がりにするためのコツをご紹介しました。調色は既存の色同士を組み合わせて、新しい色を作成するプロセスです。オリジナルカラーを作れる点がメリットですが、作業自体は単純なものではないため、ステップ通りに丁寧に進めていきましょう。

塗料の購入を考えている方は、オスモカラーをぜひご検討ください。オスモカラーとは、ひまわり油、大豆油、アザミ油などの植物油をベースとした植物由来の自然塗料です。またVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)フリーかつ、ヨーロッパ規格のEN71-3玩具安全基準(Safety of toys - Migration of certain elements:玩具の安全性-特定元素の移行)を満たしており、人と環境に配慮して製造されています。

オスモ&エーデルでは、内装と外装のいずれにも使用できるオスモカラーを豊富に取り揃えています。用途やお好みにマッチするオスモカラーを見つけてみてください。