エッセイ

なぜ「ドイツの家」なのか

なぜ「ドイツの家」なのか

家を建てようと考えたとき、その行動の種類はそれほど多くはありません。インターネットで知っているハウスメーカーにとりあえずの資料請求をしてみる。近くの住宅展示場に赴き少しばかり気に入ったモデルハウスを訪ねてみる。普段は買わない建築雑誌を数ヶ月分揃えてあまり遠方ではない建築家の事務所に思い切ってメールしてみる。あるいは普段なにげなく見かけている工務店を突然覗いてみる。稀な例としては自力建設のノウハウ本を取り寄せてみる。それくらいのパターンにわかれるはずです。もちろんどれが正解であるとかではなく思いつく限りのことをするべきだと思います。

ところで入口への行動パターンはそれほど多くないのに対して出口への道のりは千差万別です。それはあるいはコストであったりあるいは広さや動線計画であったりあるいはインテリアのデザインや外観のデザインであったりします。営業マンの人柄という選択肢だってもちろんあります。そのなかで近年目立つのが性能です。住宅の性能には様々な要素がありますがとくに断熱性能、いわば燃費を出口のひとつに選ぶ人がたいへん増えています。それは住宅の燃費を表す指標のひとつであるUa値やQ値、あるいはC値といったひとめでわかる数値への認知度があがったことが理由でしょう。この要素に対して意識の高い人は自身のなかで最低基準を設定し、それ以下の住宅に対しては検討することさえしないのでその意味では性能は出口というより入口なのかもしれません。

この住宅の燃費は一部の建築家のあいだではもう少し広義な捉え方のうえハウジングフィジックスと呼ばれています。ドイツ語のバウフィジック(建築物理)をベースにした新しい用語です。ハウジングフィジックスを定義するとすれば「住宅における光や風、熱や湿度や音などの物理的条件」となり、それを追求することで住み手のオリジナルな環境つまり個人的な快適性を整えることが可能となります。そしてひとりひとりの環境が連続的に地球環境へとつながっていきます。ただし住み手は身近なフィジックスには敏感であっても、地球環境となると少し印象がちがうことも指摘しておく必要があります。限られた予算を直接に地球環境へとあてがうことはハードルの高いものですから個人的な快適性がその意図を超えて地球環境へ貢献することが望ましいはずです。

そこでドイツについて触れておきたいと思います。なぜドイツの家なのかという問いに環境先進国だからというのは正解ですがやはり説明がかなり足りません。そもそもドイツと日本ではその気候風土がちがうのではないか、という率直な質問をよくいただきます。世界の気候風土の分類には例えば熱を極力外に出さないようにしたい「保存型」と熱や光や風をコントロールしたい「選択型」があげられますが、その場合ドイツは「保存型」、日本は「選択型」となります。ただ注意したいのはこの分類は違いであったとしても必ずしも対立ではないということです。「保存型」は「環境負荷の低減」を目指し「選択型」は「自然の享受」を目指しているわけですからその両立は少なくとも原則的には可能なはずです。

つまり環境へはローインパクトでかつ自然へはハイコンタクトな住宅です。それを可能にすることができるのはまさに環境先進国として断熱性能の進化に努めてきたドイツの高い技術力と、自然との交歓に慣れ親しんできた日本の高い感性です。この環境を保全しながらその環境を享受する仕組みこそが「ドイツの家」なのです。

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