Column

「穏やかな気候の地域にこそ、パッシブハウスを」アーキテクト工房Pure 代表取締役 高岡文紀さんにお話をお伺いしました。

アーキテクト工房Pure 代表取締役 高岡文紀さん

愛媛県松山市でパッシブハウスにこだわった住宅づくりをされている
アーキテクト工房Pure 代表取締役 高岡文紀さん。
「穏やかな気候の地域にこそ、パッシブハウスを」とこだわる真意をお聞きしました。
 
 
アーキテクト工房Pureという社名は、とてもイメージ豊かなネーミングだと思いますが、この社名に込めた思いを聞かせてください。

ご周知のとおりアーキテクトは建築家、工房はスタジオですよね。

それで最後のPureは、いつまでもピュアな気持ちで家づくりをしていきたいという願いを込めて付けました。

以前、勤めていた会社では家づくり全般の業務をしていましたが、自分の会社は何かに特化した家づくりをしたいと思って起業したのが約14年前のことです。

以来、高断熱、高気密の住宅以外は一軒も建てずにコンセプトを貫いてきました。

パッシブハウスに特化することで、お客様のアフターケアまできっちりとすることができるし、末永く快適な住宅を管理できると考えています。
 
 
主に施工をされているそうですが、建築設計はどうされているのですか?

実を言うと、私も建築設計はできるのですが自分で設計してしまうと、どうしても自分がいいと思うものしか作らなくなってしまうんですよね。

住宅は決して作品ではないので、お客様に偏った提案はしたくないと考えて、設計事務所とコラボレーションしながら家づくりを進めています。

私たちの会社はあくまでも施工のプロフェッショナルを目指したいですし、パッシブハウスの性能を引き上げることを追求していきたいと考えています。
 
 

はうすでおーがにっく

コラボしている建築設計事務所は、パッシブハウスにも詳しいのでしょうか?

取り組みだした頃は、経験も知識も乏しかったので「一緒にドイツに行って本物を見てきましょう!お金は私が出しますから。」と建築家を誘って、ドイツを訪問しました。

本場の家々を巡りながら、こんな家を日本でも作りたいと要望を伝えて話し合いました。

その他にも「はうすでおーがにっく」や「パッシブハウスジャパン」などの団体にも一緒に入っていただいて、パッシブデザインの基本や断熱の手法を学んでいただいてます。
 
 
寒い地域は断熱が必要なだけに取り組みの歴史が長いですが、比較的温暖な四国において、短期間でここまでハイレベルな家づくりができるようになった理由を教えてください。

まず材料面ではドイツを視察した際に、断熱材で現場発泡を使っている家が一軒もなかったんですよね。

使われているのはセルローズファイバーの充填かブローイング、木の繊維やEPSばかりでした。

なぜ?とドイツ人に訊ねてみると、スプレーマンと環境に害があるものを使う理由がないという返答でした。

そんな時、ある家の増築をオーダーされたのですが、壁を抜くときにでた廃棄物の処分に困ったり、こびり付いた断熱材のために新品同様の素材の再利用ができなかったりと、現場発泡のリスクを思い知るケースがあって、やはりこれを使うのは止めようと判断したんです。

あぁ、ドイツの人の言う通りだなぁと思いましたね。

それから断熱材は繊維系に変えることにして。

この事務所が最初に建てた繊維系の建物になります。

構造材にはできるだけ地場の杉材を使って、断熱材もすべて木の繊維を使いました。

北海道から山のような木の繊維が届いて、驚く職人さんに入れ方を指導して、気密シートも張っていただきました。

その結果、気密の数値が0.2で凄い!ということになったんです。

その次の現場はいきなり0.1で測定士さんも驚くほどの数値を出すことができました。

その他にはサーモカメラを使ったり、現場で施工技術の勉強会を開いたりしています。
 
 
ドイツ訪問からはじまったパッシブハウス作りを集約したのがこの建物なんですね。
ここが売りにしているコンセプトをお聞かせください。

まず、100%自然素材ということ。

屋外の木のサイディングはオーストリアなどで使われているデザインをモチーフにしています。

窓には十津川の杉をドイツの工場に送って、木製サッシに加工したものを使っています。

パッシブハウスというのは体感してこそ価値が分かるものですから、一般の方に宿泊してもらえるようにしています。

特に冬場に泊まっていただいて、本物の断熱性能を感じて欲しいと思っています。

 
 
アーキテクト工房Pure 代表取締役 高岡文紀さん

愛媛県や四国は穏やかな気候の地域ですが、北国でもないのになぜ高断熱にこだわるのですか?

私からすると逆の発想で「なんでこんなに作りやすいところに高断熱の家を作らないの?」と思っています。

少し断熱を入れるだけで、こんなにも素晴らしい家ができる。

壁などは北国の1/2で充分にパッシブハウスの基準に達することができるんです。

四国と言っても冬は寒いし、ヒートショックで亡くなる人も多くいらっしゃいます。

寒い家は、身体にもダメージがあるんですよね。

お客様にはパッシブハウスは温度ムラがなくて、エアコン一台あれば充分に全室温められるし、省エネだということをご説明しています。

部屋から部屋に移動しても温度差のストレスがないのは、快適なことなんですよ。
 
 
夏の性能はどうでしょう?
ドイツの窓や外付けブラインドなど、今後の日本の家づくりに使えると思われますか?

夏はほとんどの方が24時間エアコンをつけていると思いますが、温度と湿度を下げるのはとても難しいですね。

エアコンの重たい冷気は特にひろがりにくいので、冬よりも夏のほうが対策は難しいと思っています。

まだまだ窓やブラインドなど日射遮蔽に疎いところもあるので、建築できちんとできるようにサポートしていけるといいですね。

ドイツとかに行くと、どんな建物にも普通に外付けブラインドが付いていますよね。

見習うべきだと思います。

漆喰の壁や無垢のフローリングなどは、夏の湿度を調節する素材としてはいいと思っています。

こうした自然素材には見た目と性能だけでなく、資産価値を高めるチカラがあるんです。

呼吸する人間がビニールハウスのような家で暮らして果たして快適か?と思いますよね。

次の世代に受け継いでいく意味でも、快適な自然素材の家ならば壊す理由がなくなると考えています。
 
 
性能は言うまでもなく、デザインもスマートでカッコいいですよね。
シンプルでとても落ち着きます。

やはり、いいデザインだと思ってもらえれば、大事に使ってもらえますよね。

平凡な家じゃないという差別化をしたいと思っています。

いいデザインで、いい性能が発揮できる家を建てるのが私たちの使命。

さらに住む人のセンスが主役になるように、シンプルで上質な空間の創造を目指しています。

 
 
アーキテクト工房Pure 代表取締役 高岡文紀さん

最後にこれからの方向性をお聞かせください。

パッシブハウスに関して性能を上げるのはクリアできたと思うので、これからは設備をより充実させたいと思っています。

太陽熱の利用など、特に夏場の対応を考えていて、ダクトや冷房の分散など、できる限り簡素化して快適にしていきたいです。

その次はLCCMにも取り組んでいますが、まだ完成ではないです。

あと今は自宅をオフグリッドにしたいと思って、試行錯誤しているところです。

地元の方々にはもっとパッシブハウスへの理解を深めていただいて、同時に他県の方々とも交流しながら、より暮らしやすい家を追求していきたいと思っています。

最新コラム記事