社会福祉法人慈愛会が運営する、特別養護老人ホーム「えびの涼風園」にお邪魔してきました。
今日は施設長である白坂 公夫様にお話を伺いました。

-こちらの園を設立されたときのコンセプト、運営方針を教えてください。

私がいないときのことなので、細かいことはわかりませんけど、もともとは40数年前、昭和48年の開設になります。
設立者は病院の医師でして、当時患者さんの家に往診したときに、寝たきりのお年寄りが家の中で納戸の隅におかれて、これじゃあかわいそうだと。
何かしてあげたいな、と考えたのがきっかけ。
民間の施設としては県内で3番目ですよ。
ここら辺はほとんど農林業で、ご家族もお年寄りにそれほど手を掛けてあげられない。
もちろん病気だったら、病院なんでしょうけど、何かお世話してあげたいな、という理事長の思いを形にしたのです。

 

-現在の新館が出来たのは、4年前でしたよね。

平成25年に完成しました。
(建て替えをした)一番のきっかけは、長崎県の大村で、グループホームで大きな火事があって(入居者が)亡くなられたんですね。
火事が続いたことで消防法がかわって、全ての施設にはスプリンクラーの設置が義務付けられたんです。
前の施設はスプリンクラーもついてないし、法律で決まったから整えなきゃいけないんだけど、おおよそ40年ですから建物も傷んでいました。
配管を考えると露出でしか設置が出来ないうえ、費用も5千万くらいかかると言われたんですね。
それから、以前の施設は多床室だったんです。
ただこれからは住まい環境を考えても個室が必須だろうと。
たまたま土地が理事長の持ち物で、ある程度の広さがあったので、それを頂いて。

 

-以前は何人1室だったのですか?

前は4人部屋でした。
当時の考え方では、こういった施設はほぼ病院なんですよ。
だから設立当初は6人部屋だったんですね。
介護保険が始まったときに4人部屋にして、入りきれないから別棟を建てたんですが。
多床室っていうのは、やっぱりいきちがいがあったり、食べ物のやりとりがあったり危なかったり、色々問題がありました。
また、少し前から、厚労省がユニットケアということを勧めていましたのでね。
個室を基本にしてユニットでお世話しようという考え方なんですけど。
個室はやはり必須だろうな、と。尚且つ、ある程度の広さがあるので平屋にしました。
多層階にすると人も余分にいる部分もあるんですね。

 

-新館は、本当に家みたいな感じですね、屋根も低くてずっと平屋で空間が続くから、気持ちがいいですね。

ユニットケアの施設って色々ありますけど、大体真ん中にリビングがあって、その周りを部屋で囲んであることが多くて、中に閉じこもるというか、目線が中にいっちゃう。
ここは、中庭はありますが周りはガラスで囲まれているんで、自然に目線が外にいきますね。
だから、そこは閉じこもった空間ではないので、開放感がありますね。ゆったりとした。

-そうですよね。最初から外を見られるように、というご要望はあったのですか?

外を見るというよりは、閉じこもらないようにしましょうよ、と。
設計の方も考えて頂いて、どこに立っていても目線が外にいく、外が見えますね。

 

-今入居されている方は何人いますか?

長期入所の定員は80人、ショートステイの方用のベッドが6人分あります。
今日現在の入居者は78人です。入院されてる方もいらっしゃいます。
人数は日に日に違います。

 

-ちなみに病院は近い?

近いと言った方がいいですね。
1.5キロくらい。
前の理事長は亡くなりましたが、今も病院の理事長とこちらの理事長は同じ方なんです。

 

-それは入居者には安心ですよね?

それは安心でしょうね。
何かあったらすぐ走りますし。
夜でも。

 

―入居されているのは、地元の方ばっかりですか。

ばっかりじゃないけど、地元のえびの市の方が9割5分くらい。
隣の市の方とか鹿児島県の方もいらっしゃいます。
介護保険制度になって、われわれ施設と利用者の契約で利用できるので、昔の措置時代とは全然違いますよね。
措置時代は、町ごとに枠みたいなのがありましたから。
あと、昔と違って今は(特養が)各市町村に1箇所や2箇所はありますからね。
昔は施設自体がなかったし、選べなかった。

-最初に建てられた施設は、今のように無垢の木は使われていなかったですよね。

最初は鉄筋コンクリートでした。

 

-現在のような木の空間にしたいというご希望は最初からおありだったんですか?

居室の天井を木にしたい、という希望はありました。
何故かと言うと、お年寄りの方が例えば骨折して入院して病院から帰って来られた時、認知症が進むというか。
その原因は何で?と思って色んな施設と相談したんですけど、壁も天井も真っ白だと頭が働かないんじゃないか、と。
寝ていても何かを見ながら頭が働く、そういうものを考えないといけないだろう、と思ったんです。
そこで思い出したのが、子供のころ自分が風邪で学校休んだとき、天井の節を眼で追ったり数えたりしたよな、という経験があって。
そこから天井に板貼ろう、と話していたんですよ。
それを設計さんにも話しました。
で、天井の木の話しから、宮崎県は杉の生産量が日本一なので、木造で考えてみましょうという話になりました。
理事長も、その方が暖かみもあるし、(入居者がこれまでに)住まわれていたところも皆木造だし、いいんじゃないかと。

 

-病院じゃなくて家っぽいというか。

住まいですからね。

 

-木造になって、天井に板を貼って、フローリングにしようとなったのは?

床も当然そうだよな、木造なんだから床がPタイルじゃおかしいよ、という流れです。
でも、かなり設計・デザインを考えて頂いたと思います。

-とても美しい建物ですよね。

ただ、聞いてはいたけど、木は生きてますね。
居室の引き戸が、歪んできたりしますよね。
あと、床が湿気でちょっと膨らんで上がってきたりもします。
天井も落ちてきたりしますよ。
これはしょうがないんですけど。

 

-仰るとおり、無垢の木は動きます。
最初にこういった木質の建物でやろう、ということになったとき、心配な点はなかったんですか?

ありますよ、それは
本当に何十年ももつの?とか。
周りにデッキを貼ってるんだけど、これ10年もつのかな?と思うし。
雨ざらし、日晒しですから。
でも、一番大事なのは住んでいらっしゃるお年寄りの気持ちなので。
安心、安全も勿論だけど、気持ち的にのんびりしてほしい。
お年寄りを、こうしろああしろと管理しなくていいじゃない、危なくなければどこに行ってもいいじゃない、という考え方でやってますので。
ゆったりのんびりして頂ければ。
だから、目的は果たしていますね。

玄関なんかは、外から入ってあれだけの広さの、単純に通路なんですけど、無駄じゃない?と言われたら無駄かもしれない。
でもあれだけ広さがあるから、かもし出すゆったり感ですよね。
そういう意味ではやってもらって良かったと思います。

-確かに入ってすぐ、入居者が見えますよね。
みんな和気藹々というか、のんびり過ごしてますよね。

ゆったりとしたということもあるけど、事務所も医務室も敷居をとっぱらってオープンにしましたね。
医務室なんかあれだけ色々置いてあって大丈夫?ていう話がありましたけど、まあ裸にならないからいいんじゃない?て。
個室になったから往診すればいいじゃない、と。

 

-新しい建物になられてから、ご入居頂いている方や、来園される方の反応で、何か変わったな、と気付かれることはありますか?

新しい入居者の方の家族とか、他所から来た方はホテル並みだよな、と言われますよね。
そう言われると、我々としてはハード面だけでなくてソフト面もちゃんとしないと、と思いますね。

 

-最初から、家として作られた施設と、ただ入居させるだけの目的で作った施設とは全然違うと思いますし、入居希望の方が増えられたんではないかと思いますが。

3年前は、確かにありましたけど、去年から特養の入居条件が変わって、重たくないと入れなくなったんですよ、以前は介護度1から入居出来たんですけど。
介護度3以上でないと入れないんですね。
だから多くなったと今はそんなに感じないです。

-もともとの建物に入居されていた方も、新しい建物に移られたと思うんですが、変わったなと思うことはありますか?

職員は最初、動線が長すぎると、かなりブーブー言っていましたね(笑)。
一周400メートル。
介護職員はエリアが決まってますけど、看護師さんは数もいないから、グルグル巡回しないといけない。
今はもう文句言いませんけど(笑)まあ前に比べればかなり歩いている。

それと、気のせいかもしれないけど、入居者同士の争い事がなくなって、イライラした感じがなくなりましたね。
あと、これもわかんないですけど、インフルエンザにかかる利用者さんがないんですよ。
スタッフとか家族の方は別ですけど。
九州大学の木の先生で、木造の居室で生活すると、鉄筋アパートと比べて、罹患率が減るというような研究があるようです。
乾燥具合もあるのかもしれませんね。

-木は湿気を吸ったり吐いたりしてくれますから、木を使った効果かもしれませんね。

 

-最後にお掃除とかメンテナンスは、これだけ広いと大変だと思いますけど。

ええ、大変です(笑)
居室部分と大きな通路とか共有部分は、掃除機をかけて、酸性水を含ませた雑巾で毎日吹き上げています。
床はそれだけ。
職員では手が足らなくなったので、掃除と洗濯場の仕分けには、シルバー人材センターから、お2人きてもらっています。

 

-パッと見た感じ傷んでいるところもなく、綺麗ですよね。
入居者の方は皆さん車椅子ですけど、タイヤの痕とか汚れとか、まったくありませんね。
その他に施設のことで何か言われることが、ありますか?

周りがガラスで囲まれているから大丈夫?と聞かれたりしますが、2重のガラスで内側は強化ガラスになっています。
車椅子があたっても大丈夫です。
金槌で殴っても割れないと言われています。
ただ、ガラスは汚れるんですよね。

-ガラスが汚れると、折角の風景が台無しになりますもんね。

施設とか法人によって、利用者の家族会があるところもあって、ボランティアで掃除活動をしているところもあるみたいですけど。
ここは年1回、大体11月末~12月くらいに清掃しています。
台風が来なくなってから。
周りが田んぼなもんだから、虫がいるんですよ。
クモが軒に巣をつくったり走ったりすると汚れがつく。
だから軒天もガラス清掃の時に一緒に拭いています。

-自然とは共存するしかないですね。

中庭も夏場は2週間であっという間に草がわっと生えますからね。

 

―でも緑があるのは気持ちのよいことですよね。
ほとんど地元の人なので、自分たちの慣れ親しんだ風景の中で過ごしていることになりますよね。

そうです、それが一番ラクだし、安心なんですよ。
この前の田んぼは、5月の終わりに水を張って6月中旬くらいから田植えをして、風景の移り変わりが眺められます。
緑が育ってきたときと、穂が実ったときは綺麗ですよね。

 

-この施設は、入居者のご家族はいつでも自由に出入りが出来るのですか?

この前までは朝8時から夜21時まで玄関あけていたのですが、先日神奈川で事件があったあと、19時までにしました。
何かあったらインターホンを押してもらうようにしています。
日祭日もいっしょです。
個室になりましたので、割とご家族の方が気楽に来ていらっしゃいますね。
一週間に1回お父さんのところにお昼ご飯を食べにくるご家族もいらっしゃいます。

-入居者がのんびりゆったり過ごせて、家族が気軽に会いに来られて、これ以上いいことはないですね。
今日はありがとうございました。

えびの涼風園のHPはこちら↓
http://www.ryofuen.com/
 

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